寝るまえ 村野四郎

ランプを消すと
時計の脈搏が急に早くなった
頭がひきしまる
樹の葉が風に囁(ささや)くなかで
ひととき たくさんの声が僕を喚(よ)ぶーー

しかしそれも少時のこと
樹の葉はすっかり黙って了(しま)った
月がガラス戸の低い桟(さん)におちこんできたので
アカシアの円い葉が ふらふらと揺れながらうつっているーー

寝台の影が長く壁の上にのびて
死刑台のようだ
そして その上にいるのは僕
概して今のために
実はなくなって了った朝からの記憶のために
ぼんやりした声で
お祈禱(いのり)をあげているのだ

 (「体操詩集」より)