若い雲 村野四郎

樹の枝が濡れ
その影もぬれている
その間を
東の方から静かに歩いてくる
ひとひらの雲
水々しい光をふくんで
内からかがやくよう
そしてその為に朝だということが解るように
踆(ためら)いもなく
さわやかな肯定の上を歩いてくる

やがておもむろに色をかえる
金色の笹縁(ささべり)からみるみる燦然(さんぜん)たる金色
熱をおび
それは一片の焔となる
空一杯に鳴りひびく崇厳(すうごん)な音楽
その中へゆっくり陽がのぼってくる

私はにわかに神経をもった雲の焔が
若い神官のように
古びた廂(ひさし)の中へはいってくるのを
坐って見ている

 (詩集「抒情飛行」より)