元 西脇順三郎
 
この野いばらの実の夜明けは
この永遠という杯(さかずき)に汲まれて
新しい時間として流れはじめ
またいつしか去つて行く
でも人間よ
この青ざめた野原を
もう一度さまよつてみようか
また降る雪の中から
めざめるみどりの草を摘んで
あけぼののかゆに入れて
すすつてみようか
黄色のヒョウタンからしたたる
星のような酒で心を濡らして
もう一度よく考えてみようか
ほんのり山々の影が浮ぶとき
人間よーーはばたきして
時を告げてみようか

 (詩集「鹿門」より)