遠い音  高橋順子

遠雷を聞くようにして
聞いています

どこかで見えない音叉が成長しています
羽枕の中か
けやきの木の中で

朝になるとわかる
少しずつ遠くの音が 遠いままで
聞こえるようになる

いってらっしゃい
紙の靴を履いていってもいいから
帰ってきてください

 (「高橋順子詩集『拾遺詩篇』」より)