雲のかたち 左川ちか

銀色の波のアアチをおしあけ
行列の人々がとほる。

くだけた記憶が石と木と星の上に
かがやいてゐる。

皺だらけのカアテンが窓のそばで
集められそして引き裂かれる。

大理石の街がつくる放射光線の中を
ゆれてゆく一つの花環。

毎日、葉のやうな細い指先が
地図をかいてゐる。

 (川崎賢子編「左川ちか詩集」より)