机  北園克衛

その机は
桑の木の年輪が
あざやかにうかんでゐた

幅せまく
ひきだしは
あさかつた

若葉のころになると
南の窓にちかく
蒙求(もうぎゅう)を読んだ

それは
古い紙のにほひが
してゐた

庭の
蔭も日向も             
いちはつの花と葉に満ちてゐた

  (詩集「家」より)


*蒙求は、伝統的な中国の初学者向け教科書である。古人の逸話を集めて韻文で並べた故事集。日本でも平安時代以来長きにわたり読まれた。現在でも広く知られる「蛍雪の功」や「漱石枕流」などの故事は蒙求によって学ばれることが多い。(Wikipediaより)