メランコリア 三富朽葉

午後の薄明りの中で、
奇妙な睡りに落ちて行く
影を曳く安楽椅子の
病の身を揺るままに。

懶(ものう)げな雨の線条(すぢ)は
音もなく若葉の匂ひを煙らす
姿を見せぬ鳥の囀(さえず)りの
壊(くづ)れた胸に響くことよ!

永い間の疲労(つかれ)が
重く夢を圧(お)す時に
鳥は青い叫びを残して翔(かけ)る。

春は微笑(ほほゑ)んでゐるのかも知れないけれど
鬱(くら)い陰を揺る安楽椅子の
避け難い睡りに包まれる......

(「三富朽葉詩集」より)