馬と暴動  石原吉郎

われらのうちを
二頭の馬がはしるとき
二頭の間隙を
一頭の馬がはしる
われらが暴動におもむくとき
われらは その
一頭の馬とともにはしる
われらと暴動におもむくのは
その一頭の馬であって
その両側の
二頭の馬ではない
ゆえにわれらがたちどまるとき
われらをそとへ
かけぬけるのは
その一頭の馬であって
その両側の
二頭の馬ではない
われらのうちを
二人の盗賊がはしるとき
二人の間隙を
一人の盗賊がはしる
われらのうちを
ふたつの空洞がはしるとき
ふたつの間隙を
さらにひとつの空洞がはしる
われらと暴動におもむくのは
その最後の盗賊と
その最後の空洞である

  (詩集「サンチョ・パンサの帰郷」より)