右側の葬列 石原吉郎

その右側の葬列のため
ひたすらに その
ひだりがある
ひだりへ流れる
布の蒼白がある
蒼白のための
わずかな紅(くれない)がある
紅を点ずる
さいごの仕草がある
仕草をおさえる
おしころした手がある
その手ではじまる
葬列の右側がある

 (詩集「水準原点」より)