芽  高橋順子


くるんと身をまげて芽が出てくるのは
あれは植物のバネ
自分で自分をはじき返して立ち上がるんだ

植物の芽を見ないで過ごした時間が
やわらかい春の爪で はじき返される
きょうは会社を遅刻して
植物鉢の芽を見ていてしまった

春の爪で
はじき返されていた
地下鉄に乗らなければならない会社員が


  (詩集「普通の女」より)