山ゆり  高橋順子

きみの戸惑いがこの部屋を少しだけ
青い空気にする
ここでは戸惑うことは忘れられているから
でも二日もするときみのほうが贋物に見えてくる
陶器まがいのプラスティックだの化繊だの
贋物ばかりが棲んでいる部屋である
部屋の主も時々自分がわからなくなって
正気をなくした文章を書く
青い山にいるときのきみは自らの重さで
うっとりと俯いていたにちがいないが
ここでは心持ち上眼づかい
きみは枯れることができるかどうか不安になる

 (詩集「普通の女」より)