露天掘 小野十三郎

かつてここに
山があつた。
鬱蒼(うっそう)として樹々は茂り
千古の靄(もや)につつまれてゐた。
かつて山であつた大空間。
これがその周壁だ。
腑分けされた肉体のやうに無慚(むざん)な
鉛色の段丘を
天日に曝(さら)してゐる。
ビンガム。メサビ。
キルナヴアーラ。
夢にくる日本の山も
かくのごとくあれ。

  (詩集「風景詩抄」より)