住居 小野十三郎

六月の雨に
葦は水浸しになつてゐる。
海からくる火力電の鉄柱が
雨中に交錯してゐる。

さアと
子供を急きたてて
傍(そば)の女が降りた。

窯(よう)業の 非鉄金属の
雨しぶく大湿地。

葦原に
街あり。

 (詩集「風景詩抄」より)