魚  シュペルヴィエル

深い入江の中の魚たちの記憶よ、
ここで僕が おまえたちののろのろした思い出をどうすれば
 いい。
僕の知るのは僅かばかりの泡と影、それといつの日か
おまえたちも僕と同じに死なねばならぬ それだけだ。

それなのにおまえたちは やって来て僕の夢に何を訊ねる?
僕がおまえたちの救いになれるとでも思ってか。
お帰り 海へ。僕をこの乾いた地上に残してお行き。
僕らは互いの日々を交えることのできない生れなのだ。

  (詩集「未知の友だち」安藤元雄 / 訳 より)



スターシュペルヴィエル Supervielleは高校の現代国語の教科書に「動作」という詩が載っていて、そこで初めて知りました。1884年ウルグアイの首都モンテヴィデオにフランス人移民の子として生まれ、1960年パリで亡くなりました。