焔の先 シュペルヴィエル

一生の間 彼は
蠟燭の光で
本を読むのが好きだった。
ときどき彼は
その焔に手をかざした。
たしかめるため
自分が生きていること
生きていることをたしかめるため。

死んだ日からも
自分のそばに 彼は
火のついた蠟燭を置いている。
しかし手はしまったまま。


 (詩集「万有引力」安藤元雄訳/より)



シュペルヴィエルは南米というヨーロッパとは異質の風土と、そこにみなぎる粗野な生命力とを具体的に体験していた。モンテヴィデオのシュペルヴィエル一族は移民としても成功者であり、広大な牧場や商社や、さらには銀行までをも所有していた(安藤元雄)