泥のブロオチ 北園克衛

翼あるコップとともに
アメリカの太陽に向ひ
思考の表面がキャベツのやうに縮れる
ステインレスの風が吹く日
君のスウツは白粉をつけたタキタスの笑ひである
ライタアを出してガラスを割り
指をまげて立ち上る
そして少し成功する
ニュウヨオク・タイムスの上に雲が出る
柔らかなベレにもたれて
中心を外した水滴にあひ
際限のない生長の空虚のなかで
僕のための僕のために
一束の菫(すみれ)の花が
白いスウツのボタンホオルに
恋の形に明るくなる
若いカンパニイの
ヒアシンス色のガラスのために

  (詩集「固い卵」より)