囁き ( 三好達治 ) 囁き 三好達治 岬鴉(からす)ーーオモシロクナイナア・・・。谺(こだま)ーー・・シロクナイナア・・・。 川鶺鴒(せきれい)ーー川の石のみんなまるいのは、私の 尾でたたいたためです。河鹿(かじか)ーーいいえ、私が遠くからころがしてき たためです。石ーー俺は昔からまるかったんだ。 池鯉(こい)ーーいくたびか鮒たむろする今朝の秋鮒(ふな)ーー二三枚うろこ落して鯉の秋 噺(はなし)駱駝(らくだ)ーー俺はそんなちつちゃな孔をとほらな けや天國へゆけないのかなあ。針ーーいいのよ、私がとほつたと云つてあげるわ。 (「測量船」拾遺 )