秋 西脇順三郎

   I
灌木について語りたいと思うが
キノコの生えた丸太に腰かけて
考えている間に
麦の穂や薔薇や菫を入れた
籠にはもう林檎や栗を入れなければならない。
生垣をめぐらす人々は自分の庭で
神酒を入れるヒョウタンを磨き始めた。

   II
タイフーンの吹いている朝
近所の店へ行つて
あの黄色い外国製の鉛筆を買つた
扇のように軽い鉛筆だ
あのやわらかい木
けずつた木屑を燃やすと
バラモンのにおいがする
門をとじて思うのだ
明朝はもう秋だ

 (詩集「近代の寓話」より)