秋(西脇順三郎) 秋 西脇順三郎 I 灌木について語りたいと思うがキノコの生えた丸太に腰かけて考えている間に麦の穂や薔薇や菫を入れた籠にはもう林檎や栗を入れなければならない。生垣をめぐらす人々は自分の庭で神酒を入れるヒョウタンを磨き始めた。 IIタイフーンの吹いている朝近所の店へ行つてあの黄色い外国製の鉛筆を買つた扇のように軽い鉛筆だあのやわらかい木けずつた木屑を燃やすとバラモンのにおいがする門をとじて思うのだ明朝はもう秋だ (詩集「近代の寓話」より)