川   千家元麿

川、川
清い川
おまへは波立ち
楽しげに走つてゆく
笛のやうに歌ひ乍ら
曲つたり、真直ぐになつたり
少しも休まず
流れてゆく清い水よ
おお楽しげに軽らかに
みんなで跳り上つて障害物を越えたり
輪を巻いて踊つたり
急に輪をほどいて走り出したり
狂ふやうに楽しく興奮して
先きへ先きへと笛を吹いて走つてゆく
美くしい水の精よ
純潔に平静に
軽らかに屈託も無く
楽しい旅をしてゆく川よ
走れ、走れ
足並揃へて

  (詩集「炎天」より)