草の上 三好達治
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野原に出て坐つてゐると、
私はあなたを待つてゐる。
それはさうではないのだが、
たしかな約束でもしたやうに、
私はあなたを待つてゐる。
それはさうではないのだが。
野原に出て坐つてゐると、
私はあなたを待つてゐる。
さうして日影は移るのだがーー
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かなかなはどこで啼いてゐる?
林の中で、霧の中で
ダリアは私の腰に
向日葵は肩の上に
お寺で鐘が鳴る。
乞食が通る。
かなかなはどこで啼いてゐる?
あちらの方で、こちらの方で。
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池のほとりの黄昏は
手ぶくろ白きひと時なり
草を藉(し)き
静かにまた坐るべし
古き言葉をさぐれども
遠き心は知りがたし
我が身を惜しと思ふべく
人をかなしと言ふ勿れ
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鵞鳥は小径を走る。
彼女の影も小径を走る。
鵞鳥は芝生を走る。
彼女の影も芝生を走る。
白い鵞鳥と彼女の影と
走る走るーー走る
ああ、鵞鳥は水に身を投げる!
(詩集「測量船」より)