以前にアップしたこの詩が、なぜか好評のようなので、再度アップしてみました。三好達治と丸山薫は何もかも全然違うと思われるのに、よく混同する私です。***いま検索してみたら、三好達治は三高時代に、同級の丸山薫の影響で詩作を始めたのだそうです。同世代で同級だったことも知りませんでした。


 草の上 三好達治

     ★
野原に出て坐つていると、
私はあなたを待つている。
それはさうではないのだが、

たしかな約束でもしたやうに、
私はあなたを待つている。
それはさうではないのだが、

野原に出て坐つていると、
私はあなたを待つている。
さうして日影は移るのだがーー

     ★    
かなかなはどこで啼いている?
林の中で、霧の中で

ダリアは私の腰に
向日葵(ひまはり)は肩の上に

お寺で鐘が鳴る。
乞食(こじき)が通る。

かなかなはどこで啼いている?
あちらの方で、こちらの方で。

     ★
池のほとりの黄昏(たそがれ)は
手ぶくろ白きひと時なり

草を藉(し)き
静かにもまた坐るべし

古き言葉をさぐれども
遠き心は知りがたし

我が身を惜しと思ふべく
人をかなしと言ふ勿(なか)れ

     ★
鵞鳥(がちょう)は小径(こみち)を走る。
彼女の影も小径を走る。

鵞鳥は芝生を走る。
彼女の影も芝生を走る。

白い鵞鳥と彼女の影と
走る走るーー走る

ああ、鵞鳥は水に身を投げる!


     (詩集「測量船」より)