通っていた幼稚園は家からそこまで遠く無かったため、バスでは無く毎朝母と徒歩通園していた私はいつもの通り母の迎えを待っていた


みんながバスやお迎えが来て帰って行くなか

最後になってしまった


母の退院後しばらくして祖母は実家へ帰っていたため、迎えに来られる人もおらず一人トボトボ帰った



家に帰り着いても母の姿は無く、しばらく一人で遊んでいたが、テレビを観ようと居間に行った際、テーブルの上の灰皿が目に入った


口紅のついたタバコ、そして灰皿の下に挟まるように置かれていた手紙


手紙には

『ごめんね。元気でね』と



途端に心臓が跳ね上がり居ても立っても居られなくなった私は裸足で外に飛び出した


母を呼ぶがもちろん姿は無い


涙が止まらなかった



まだ平成の初め、携帯なんてものも無く

父の職場の電話番号も分からない子供の私には

何も出来ない


ただ父の帰りを待つしか




不安と恐怖の中

無情な時を過ごすしか無かったのだった