昨夜の母
「かわいい子だねえ」
私
「誰かいるの?」
母
「そこに」
私
「私のうしろ?」
母
「そうだよ。あんたの背中のとこにいた」
錯視や気配(誰かまだ帰って来てない気がする、など)は多いが、純粋な幻視は久しぶり。
私
「私には見えないよ」
母
「えっ。見えないのか」
私
「うん。うちはママと私だけだもん。他には誰もいないんじゃない?」
母
「そうなのか…。ほんとだ!いない…」
私
「かわいい子って男の子?女の子?」
母
「女の子だった」
私
「こわかったの?」
母
「こわくないよ」
在宅介護が始まった頃、幻の子供に食べていたパンを差し出したりはしていたが、幻視で怖がったことがない。
むしろ指差して笑ったり、何やら楽しそうだった。
嘘でも楽しいならいいんだろう。
きっと。