安寿恋しや ほうやれほ~
厨子王恋しや ほうやれほ~
森鴎外の『山椒大夫』の最後の場面!
盲目になった母親が歌う切ない姿を思い浮かべながら
涙がこみ上げてきた。
父が読んでくれた『山椒大夫』の話に
胸を締め付けられる思いがしていた。
紅海が割れ、
モーゼとエジプトの民がその割れた海の中を進む
クライマックスシーンの
『モーセの十戒』
海が割れる壮大な場面を想像しながら
ワクワクと父の話に聞き入っていた。
そして
ディズニー・アニメ映画『わんわん物語』
二匹の恋する犬が繰り広げる
一本のスパゲティーが結ぶキスシーン!
子供ながらにキュンキュンとした。
なぜだか、そのシーンしか覚えていない。
何よりもジュンヌの人生に大きな影響を与えたフランス映画。
真っ赤な大きな風船が
少年の後を子犬のようについてまわるシーン。
裏寂れたパリの下町と赤い風船のコントラストが鮮明に脳裏に焼きついた。
アルベールラモリス監督の『赤い風船』
子供ながらに下町の情緒ある美しさに吸い込まれ、
一緒にパリに居る錯覚に陥った。
この情景が、
後に20年のパリ生活へとジュンヌを導いていくことになろうとは
このときは夢にも思っていなかった。
父が読んでくれた本や見せてくれた映画は
知らない世界へジュンヌの好奇心を運んでくれた。
小学生の頃の父との思い出は、ワクワクすることが多かった。
しかし、
父は自分が興味を持ったことや
新しいことは積極的に与えてくれたが、
子供の行動や生活に関心を示さなかった。
いや、無関心のように思えた。
そのため、
甘えたいのに甘えられないジュンヌにとって、
父は親子というより
いろんなことを教えてくれる人生の先輩的存在でしかなかった。
好奇心を満たしてくれた思い出はいっぱいあるのに
どこかに満たされない寂しさがあった。
掴み取れない何かを必死で追い求めていた。
もっと愛されたいという欲求は、
甘えたいのに甘えられない!
甘えてはいけないような・・・
複雑な思いに変わり、
人に甘えられない、
頼れない
「自分でなんとかしなくては」という思いに変わっていった。
今は
「父も子供の頃、十分な愛情を与えてもらえなかったため、
子供の愛し方がわからなかった」のだと理解できる。
晩年になり、
孫を膝の上に乗せて可愛がっている父を見た時、
嬉しかった・・・。



