「Pourriez-vous me donner ça et ça?」
(それとそれをいただけますか?)
買い物帰りに食料を買ってホテルで食べようと注文をした。
「ん?! ない!お財布がない!」
「どこで失くしたのだろう?」
狐につままれたようだった。
もしかしたら?
「Attendez un moment」
(ちょっと待ってください)
それしか言えず、
慌てて店を飛び出した。
ファッション雑誌を買ったキオスクまで走った。
「N’est pas tombe mon poetefeuille?」
(私の財布、落ちていませんでしたか?)
キオスクのおばさんは、
私がファッション雑誌を買った後、
その雑誌の上にお財布を入れて帰ったと言った。
本当だろうか?
盗られたのか、落としたのかわからないまま
食料も買えず、一人寂しくホテルに戻り、
食事抜きの夜を過ごした。
今朝5万円両替したばっかりなのに・・・
悔しかった。
嘆いていても仕方がない。
「あと数日でパリを発つのだから残りの日本円を
全部を両替してお土産を買うしかない」
仕方なくすべての日本円(最後の5万円)をフランに両替して、
お土産などいろいろ物色しながら歩いていた。
話し相手もなく退屈そうに見えたのか、
「お茶飲みませんか?」と
片言の日本語で
男性が声をかけてきた。
お茶くらいならいいかなと思い、
カフェに入って片言の日本語と
片言のフランス語でしばらくおしゃべりを楽しんだ。
途中トイレに行くためにバッグを持とうとしたら、
「見ててあげるから置いて行ったら」
ここが日本人(私だけかもしれない)の情けないところで、
大きなカバンだったこともあり、
相手を信用していないのではと思われたくない思いがあり、
置いていった。
(こんなところでも自分を良く思われたいという感情が働いていた)
しばらくして
カフェを出る時に、
コーヒー代を払おうとしてバッグに手をかけたら
「いいよ、僕が払うから」といって
彼がごちそう?してくれた。
彼と別れてホテルに帰り、
なんとなく嫌な予感がしてバッグを開けた。
お財布は入っていた。
だが、今朝両替した全所持金がなくなっていた!
「なんてバカなんだろう!」
自分のバカさ加減を攻めたが後の祭り。
眼の前が真っ暗に・・・
帰国まであと数日あり、空港までのお金もない!
一睡もできず、悶々として過ごした。
翌朝、日本領事館に電話をして事情を話し、
「お金を貸してください」と言った。
「お金を貸すことはできないが、
このままでは日本に帰ることもできないから、
とにかく領事館に来てください」と言われた。
「お金を貸してくれないのなら自分でなんとかするしかない!」
泥棒イタリア人に出会った
サンジェルマン・デ・プレに行った。
しかし、
いつまでも同じところに泥棒がいるはずはないと
思いながらも、
「絶対になんとかなる!」
「絶対になんとかする!」
わけのわからないことをつぶやきながら、
ひたすら歩き回った。
不思議と悲壮感はなかった。
根拠のない自信だけを頼りに、
朝から夜まで一日中あてもなく歩き続けた。
街の帳も落ち、
夕日が低く街を照らしている。
すでに夜の10時半になっていた。
すると、
夕日を背に一人の男性が歩いてきた。
近づくにつれ
「どこかで見た顔!」
「そうだ!ミラノのナンパ男だ!」
なんか一筋の希望の光が差した気がした!
話はカーン大学に戻るが、
一緒に来た友達が先に帰国した後、
そこで友だちになったKさんとミラノまで旅をしていた。
二人でローマまで行く予定だった・・・
その時二人のイタリア人が声をかけてきて、
Kさんはその一人のナンパ男と仲良くなり、
しばらくミラノにとどまると言い出した。
仕方なく先にローマに行くことにして、
そこで落ち合おうと別れた。
がしかし、kさんは来なかった。
ローマの街を一人で観光をして、
スイスを周ってパリに戻ってきた直後の出来事であった。
彼がパリにいるということは、
きっとkさんも一緒に違いないと思って
Kさんのことを聞いてみると、
「知ってるよ」と言って
彼はKさんの泊まっているホテルに案内してくれた。
Kさんにやっと会えたことで嬉しさがこみ上げてきた。
事情を話しお金を貸してもらい、
無事帰国の途につくことができた。
“地獄に仏”とは
このようなことを言うのかもしれない。
ミラノのナンパ男が仏に見えてきて笑えた。
振り返ってみた時、
あの時、10時半前に諦めていたら、
彼とも会わなかったかもしれない・・・
1ヶ月半の夏休みを利用しての初ヨーロッパ旅行で
友の緊急入院から、全所持金を失う経験まで
本来だったら、
もう二度と行きたくないと思ったかもしれない・・・
最後まで諦めなかったことで
奇跡が起きたと勝手に確信を持ったジュンヌは、
この旅行によって
計り知れない自信を得ることができた。

