試行錯誤の3年が過ぎ、売上も順調に伸びていった。
母校から新卒デザイナーとして女性4人を採用して
ジュンヌはチーフデザイナーとして
ブランドを引っ張っていく立場になった。
営業マンも増え、10人ほどのブランドになったが、
ほとんどが新卒のため
ジュンヌの仕事は増える一方だった。
それを理解していない上司との間で、
意見の食い違いや、一方的な指示に
毎日のようにバトルが繰り返された。
ジュンヌの机の前に
4人の新人の机が2人2人対面になるように配置されていた。
ある時から
前の2人の机の上に
本が置かれるようになった。
それが段々と高くなり、
いつしか完全に視界が塞がれ
【本の壁】ができた。
これって無言の「うざい!」攻撃では?
上司とのバトルは、
言っていることが正しいとか正しくないかということよりも
後輩たちにとっては、
感情のぶつかり合いにしか聞こえず、
耳を塞ぎたかったのかもしれない。
その時、初心の頃の決意を思い出した。
「どんなに嫌なことがあっても3年は辞めない!」
その3年も過ぎ、
チーフデザイナーになったばかりである。
「そうだ!もう3年チーフデザイナーとして
勉強をさせてもらおう!」
そう誓ったものの、
どうしたら良いかわからないジュンヌは、
何を思ったか『話し方教室』に通いだした。
話し方教室では、
自分がイニシアチブを取るために
自ら進んで挨拶をし、話しかけていくことを教わり、
言われるままに始めてみた。
最初はぎこちなく、周りも驚いているように感じたが、
ジュンヌの挨拶を無視していた近所の頑固おじいさんも
少しずつ表情が柔いでいった。
後輩たちともミーティングをするようになると、
【本の壁】もなくなり、
コミュニケーションが徐々に取れるようになって
動いてくれるようになった。
そんな話し方教室でクラスの代表に選ばれたジュンヌは、
500人の前で3分間スピーチをしなくてはならなくなった。
朝礼で話すのも嫌だったのに、
500人の前で話すなんて恐怖でしかなかった。
しかし、決まってしまった以上話すしかない。
自分が会社で取り組んだことで
後輩達が変わったことを話すことに決め、
タイトルを
『ミノムシが働き蜂に変わった!』に決めた。
ストップウオッチを片手に何度も何度も練習を重ねた。
消えてしまいたいほど緊張しているジュンヌが
500人の前に立っていた。
「あれだけ練習したのだから大丈夫!」と
自分に言い聞かせ、話し始めた。
終わり30秒前に旗が上がり、
3分を超えると失格になる。
なんとか話し終えたジュンヌは、
「ほっ!」と胸をなでおろした。
全員のスピーチが終わると結果発表である。
なんと
ジュンヌは賞をもらうことができ、
特典として授業料半額免除が付いてきた。
そのことを機に
今まで女の子は面倒くさいと思っていたのに
心境の変化が起きた。
「女の子も悪くないじゃん!」
その後、女性の友達が増えていった。


