シェーカーを振る音が止まり、

ハワイアンブルーの液体がグラスに注がれた。

 

カウンター越しのお客様の話し声がBGMと混じり合って

アンニュイな空気が漂っている。

 

 

 

 

 

ファッションデザイン科へ進級したジュンヌは、

個性あふれる仲間に囲まれ、

立体裁断の面白さに新たな可能性を見出していた。

 

 

反面、

ディスコへ通う子や、アルバイトをする子など

今までの仲間とは違った人たちと出会い、

学業以外の世界に好奇心が動き出していた。

 

 

パリで修行してきた先生の影響もあり、

いつしか子供の頃憧れていたパリに

行ってみたいと思うようになった。

 

思ったら止められない性格

 

 

「ね~、夏休みにパリに行かない?」

同じグループの女友達に声をかけてみた。

 

 

「いいね!」

「行きたいね!」

「行こうよ!」

 

 

話は簡単に決まり、

二人の間で初めてのヨーロッパ旅行計画が始まった。

 

 

しかし、

ジュンヌにはパリ行きの資金など親に頼めるはずもなく、

自分でなんとかするしかないと思っていた。

 

  

 

学生の中には水商売のバイトをしている子も

いることを知ったジュンヌは、

 

「そうだ、アルバイトで資金を作ろう!」

決断すると行動は早い。

 

 

早速、

新宿のコンパでのアルバイトを決めてきた。

 

 

18時から23時半まで

カウンターの中に入って、お客さんの注文を聞いたり

話相手をするのが主な仕事だった。

 

 

店には丸い大きなカウンターが5箇所ほどあり、

その丸いカウンターの中にお酒を作るバーテンダーと

ミニスカートの制服を着た女性が入って接客をする。

 

どちらも学生のアルバイトも多かった。

 

 

カウンター越しに

大学生やアーティスト、サラリーマンなど、

いろんな職業のお客様が来てくれ、

社会経験のあるジュンヌにとっては、

学生と社会人の両方を体験しているような感覚だった。

 

 

以外にもそんなお客さまとおしゃべりが

ジュンヌの好奇心を満たしてくれた。

 

「もしかしたらこの仕事向いているかも?!」

密かに思った。

 

 

アルバイトのお陰で、

夏休み前までの半年間で30万円ほど貯まった。

 

しかし、一月半ほどの個人旅行には資金不足である。

ジュンヌにとって

これ以上資金を作ることは時間的にも無理だった。

 

 

仕方なく

恐る恐る両親にお願いしたところ、

 

 

思いがけず30万円貸してもらえることになり、

資金は60万円になった。

 

「よし!これでパリに行ける!」

初めてのヨーロッパ旅行にワクワクドキドキしていた。

 

 

スチューデントパスの手配や、

ノルマンディーのカーン大学での3週間の語学研修、

宿泊先、飛行機の手配とやることはいっぱいあったが

心はすでにパリに飛んでいた。

 

 

友達との二人旅の準備は着々と進んでいったが、

この先、旅先で思いもかけない出来事に遭遇するとは

夢にも思っていない二人だった。