本を片手に、どこまでも。 -1193ページ目

SVAカンボジア図書館ニュース1999年5月13日


こんにちは。今日は朝3時ごろから雷を伴う雨が降り、プノンペン中今だ大きな水たまりがいたる所で見られます。

  今日から3日間のワークショップも始まりました。初日ということで、スタッフ(チャントン、ソポル、ソヴァン、ソポン、ポリー)5人がワークショップに行っています。おかげでオフィスはがらんとしています。

  今日は頭がまとまらず、移動図書館のレポートをだらだら書いてしまいました。施設の所長とは1時間ぐらい話したので、下記の用に要約するのは難しかったです。質問等ありましたら、お待ちしています。



1)青少年更正施設での移動図書館。

  昨日(512日)図書館事業課は、青少年更正施設で移動図書館を行いました。鎌倉を含めまだ一度も行ったことのないスタッフがいたので、図書館事業課全員でこの施設を訪れました。

  図書館事業課が移動図書館を行っている青少年更正施設は、カンボジアの政府が管理運営している唯一の更正施設で、現在13歳から17歳まで、34人の少年が収容されています。移動図書館を行う前、この施設の所長であるパウサミー氏から簡単なブリーフィングを受けました。パウ氏は、ここにいる少年達は、窃盗、恐喝強盗、スリ、そうして詐欺などの罪を問われて入ってきたこと、子ども達は貧困層の家庭からだけではなく、裕福な家庭や両親が離婚した家庭など様々な層から来ていることなどを話してくれました。この施設で少年達は、職業訓練や基礎教育を受けることが出来ます。職業訓練は、比較的ニーズの高いメカニック(スクーターの修理など)や野菜栽培の訓練を行っていますが、訓練に使う道具が不足しているので十分な訓練にはなっていません。基礎教育は、国語や道徳を教えていますが、子ども達の知識にばらつきがあるため2クラスに分けて授業を行っています。

  ブリーフィング中パウ氏は、カンボジアにはまだ子どもに対する人権条約や法律が定まっていないことを一番の問題としてあげました。また裁判のシステムも整備がされていないので、裁判を受けることなしに施設に送りこまれる子どももいるそうです。この施設は社会事件省(The Ministry of Social Affairs)の管轄ですが、法務省と共同で子どもの権利や人権に関する法律を作成中とのこと。

  ブリーフィングの後、少年達がいる教室へ連れていってもらいました。少年達は、上目使いに人を見ながら、私語一つなしに座っていました。鎌倉は正直「この少年達に、絵本を使ったおはなしが出来るのかな?」と不安でした。この日は、施設に生えている大きな木の下でお話をすることになりました。施設の職員が「椅子を持って一列応対で歩くように」というと、少年達は言われたまま出てきました。

  チャントンとソポルがいつも通り「今日は暑いね。」とか「JSRCの絵本を読んでる。」とか少年達に語りかけました。反応は有るような無いようなで、一人二人がぼそぼそと「うん。」と言っている状態。それでもチャントンとソポルは笑顔をたやさずパネルシアターを始めました。まずは、動物あてクイズ。動物の体の一部をパネルに張って、「この動物はなんだ?」と聞きました。また一人二人が「ウシ」、「ウマ」と言うだけです。でも他の少年も興味が出てきたのか、じっとパネルを見たり、前の椅子に手を置き始めたり、上半身を前に乗り出しはじめました。動物当てクイズも二つ、三つと進むうちに、「これは、絶対ゾウだ!」「いや、ライオンだ。」と少年達が声を上げ始めました。最後は、自分が正解しても、はずれても回答を見て拍手が起こりました。

  次にソポルがJSRCの絵本ナンバー7「お父さんの面倒を見ない四人の子ども」を読みました。この本は、「野望は損害をもたらし、親に感謝の気持ちを持たないものは恥をかくことになる。」という教訓を教える民話です。少年達はどのような気持ちで聞いていたのかは分かりませんが、面白いシーンでは声を出して笑い、お話に出てくるお父さんが子ども達のせいで不幸になっていく場面では、静かに身動きもせず聞いていました。その次は、チャントンの「こぶとりじいさん」。チャントンにジェスチャーもあって、また少年達から笑いが。その後、ソヴァンによる手品。この手品あと、タネの分からない少年達は大笑いするものあり、きょとんとしているものあり。手品の後、チャントンが「誰か歌を歌いたい人。」と聞くと少年の何人かが、手を上げ、まだ呼ばれもしないのに、前に出てきました。施設の先生方も、笑いながらこの規則違反には、眼をつぶっていました。最後は、みんな輪になって踊りが始まりました。

  おはなしが終わった後、JSRCのスタッフが「がんばってね。」というと、みんなにこっと笑ってうなずいていました。ポリーは、「またあとで、なんていえない。今度来たときいないように願うしかないね。」といってました。

  おはなしの最中、少年達の顔は最初に会った時の顔とは違っていました。険しさや冷たさがなくなり、逆に13歳から17歳とは思えないような“子どもの笑顔”をしていました。どうして、彼らが犯罪に走ってしまったのか?と考えさせられました。

  この少年達は、ここを出てからが本当の勝負だと思います。また戻って来ませんように、ここで得た技術や知識を使って職に就けますように、そうしてこれからの人生を悔いなく送れるように願っております。



2)学校に行っている子どもと行っていない子どもではどう違う?

という質問を、明日ゴミ捨て場へ移動図書館に行くソヴァンさんに聞きました。ソヴァンさんは「今日の更正施設で分かったでしょ。おはなしが一つ一つ進むたびに、子どもは集中して、おはなしの世界に入っていく。だから、やり方は特に変えないけど、孤児院だとか特別な状態にいる子どもには気を使うようにしている。」といっていました。

SVAカンボジア図書館ニュース1999年5月12日

今日は、青少年更正施設での移動図書館があります。このレポートは明日の号で。



1)木材の値上がりが図書館活動にも影響

  ここ数年木材の値段が上がっています。政府が森林保護のため、森林伐採と輸出を禁止したためとか。確かにタイ国境近くのバッタンバン州プノンプルックに移動図書館に行った時、多くの山が禿山になっていました。学校建設のスタッフが木材の値段の話をしているのはよく耳にしていたのですが、図書館にはあまり影響はないだろうと思っていました。しかし先日木工所に紙芝居の箱、謄写版、移動図書館用の箱、木工のおもちゃの見積もりを出しに行ったら、一年前は36ドルで一つ作れたはずの移動図書館用の木箱が、46ドルと言われました。

  木工所の人によると、一年ほど前は一平方メートルの木が120ドルだったが、今は280ドルまで値上がっていると言っていました。特にプノンペン近郊は高くなっているとソポンもいっていました。

  もう謄写版、紙芝居の箱、移動図書館用の箱も在庫が少なくなってきています。この様なこともあり、今年は製作数を減らさざるをえなくなりそうです。



2)カンダール州でのワークショップ明日から開催

  「図書館活動とおはなしワークショップ」が明日から3日間、カンダール州教育局と教育省の協力体制のもと開催されます。参加者は、80人の予定。今回のワークショップの主な参加者は、学校の校長、州や郡教育局の職員です。ワークショップの目的は、おはなしを通じた教育効果(教育内部効率を含む)とカンボジアの文化復興。一日目は、図書館の意義、図書館員の役割、おはなしがもたらす効果、子どもの心理、おはなしの仕方の講義が中心になります。これはJSRCスタッフと州教育局の職員が行います。二日目は、実際おはなしをしているところを見てもらい、また実際参加者にもおはなしをしてもらいます。そして、三日目に謄写版の説明と実践になります。

  昨日で、会場のセッティングもワークショップに使う絵本や紙芝居の準備も終わり、あとは明日を待つだけです。



3)図書館スタッフ紹介(1)チャトラーさん

  チャトラーは、責任感の強いアシスタントコーディネーターです。アシスタントコーディネーターの仕事は、テレビ業界で例えるとAD(アシスタントディレクター)のようなもので、つまりなんでもやらなければいけません。年次報告書書きから、絵本編集委員のメンバー、そしてツアーで来られる方々のレストランの予約までこなしています。

  チャトラーは、仕事が終わるまで帰らないスタッフです。大切な書類が終わらなかったら8時まででも9時まででも残ってやるし、セミナーや大きな行事の前は、オフィスの床で寝ているときもあるそうです。鎌倉はまだチャトラーが床で寝ているのは見ていないですが、「来年の3月にあるおはなしきゃらばんセミナーの時見られるよ」とチャトラー自身がいっていました。JSRCで働き始めてから、どんどん痩せていっているそうな。

  でもどんなに忙しくても、眼の下にクマをつくっても、子どもが病気で病院に行った後でも、ちゃんとオフィスに来て、コンピューターを打っているチャトラーはアシスタントコーディネーターの鏡です。でも体にだけは注意して欲しいです。

  チャトラーは昨日まで泊りがけでスヴァイリエン州(プノンペンから4時間)に出張に行ってました。今日は、タケオの小学校と教員養成学校の図書館へモニタリングに行きます。その上、517日までには1998年度の年次報告書を仕上げなければなりません。がんばれチャトラー!(チャトラーへ励ましのメール、手紙を待っております。)

カンボジア図書館ニュース1999年5月11日

おはようございます。昨日はまたまたウィークリーミーティングが長引き、今日も少し疲れ気味です。この頃スタッフもフル回転でいろいろな仕事をこなしています。忙しくなると、自分を見失うこともありますが、昨日のミーティングで「図書館事業の目的」を再確認しました。このがんばりが、未来のカンボジアを担う子ども達のためになる、と思えばまたがんばれそうです。



1)誘拐防止の絵本!?

  今週印刷が終了した絵本ナンバー42。クメールスタッフ曰く、増えつづける子どもの誘拐を防止するのに役立つ絵本であるとのこと。内容は要約すると、「一人の男がお金持ちの財産を狙っていた。お金持ちの家族が田んぼに出かけたのを見た男は、僧侶の姿になりその家に行った。その家には、病気がちの子どもと未亡人がいた。未亡人はその男を僧侶と思いこみ、子どもの病気を治してくれるよう頼んだ。男は快く引き受け、未亡人にお供え物などを用意させた。その後、男は未亡人に粉引き(カンボジア式の粉引き)があるところに連れて行くよう頼んだ。(カンボジアの粉引きは、シーソーのようになっていて、片方を足で踏み、片方で穀物をつぶして粉を作る)男は、片方に未亡人を立たせた。粉ひき器のかだがわに未亡人が乗ったのを見ると、男はもう片側に子どもを乗せた。未亡人は自分が粉引き器から降りると、子どもをつぶしてしまうので、動けなくなった。その隙に男は金銀を取り逃げていった。」

  カンボジアでは子どもの誘拐が頻繁に起こっています。スタッフ曰く、JSRCオフィス近くの小学校(モハモントレイ小学校)でも数人の子どもが誘拐されたそうです。誘拐の手口は日本の似ていて(私が小学校の時よく先生が言っていた)、「お菓子をあげるよ。」とか「お父さんがあっちで待っているから連れていってあげる。」とかいうそうです。つまり知らない人から声をかけられたら、気軽に家の戸を開けたり、ついて行ってはいけないということを教えているそうです。カンボジア版「7ひきのこやぎ」とでもいいましょうか。

  この絵本が、カンボジアの犯罪を減らす!?



2)青少年更正施設での移動図書館

  明日5月12日に、青少年更正施設で移動図書館を行います。そのスケジュールの調整にチャントンとソポルが行って来ました。現在この施設には32人の男の子が収容されています。施設の所長であるパウ・サミーさんは、「1996年ごろは120人が収容されていました。それにここを出ても、またすぐ悪い事をして警察に捕まり、戻されてきました。JSRCが移動図書館をここで始めてくれ、またJSRCが来ないときでも職員が一日一つのおはなしを子どもにするようになりました。太鼓を使って踊りとかもしています。そのせいか、一度ここを出た子どもがまた戻ってくることがなくなりました。おはなしの成果なのかもしれません。」と語ってくれました。

  明日の移動図書館の準備をソポル、チャントンがしています。



3)ゴミを集めて生活をする子ども達への移動図書館

  プノンペンの郊外に大きなゴミ捨て場があります。そこでは多くの子ども達や家族がゴミの中からお金になりそうなものを拾い、それを換金して日々の生活をしています。しかし、このゴミ捨て場の衛生環境は悪く、子ども達はビンのかけらで足を切ったり、汚い手で目をこすってしまい、眼病にかかっています。また子どもの中にはお腹の中に寄生虫を持っている例も多く報告されています。

  日本のNGOであるJLMMは、このゴミ捨て場で衛生教育を行っています。514JLMMは、子ども祭りを開催し、イベントを通して寄生虫のための薬の配布や衛生教育を行います。JLMMからJSRCに、子ども達のために移動図書館を行ってほしいというリクエストがありました。このイベントにはインストラクターであるソバンさんが参加する予定です。ソバンさんは、JLMMとのミーティングで、子どもの生活状況等を積極的に質問して聞いていました。ソバンさんは「学校に行っていない、おはなしを聞いたこともない子供がこの日初めておはなしの世界に触れることになる。楽しめるおはなしや衛生に関係するおはなしを選んで、子ども達に楽しんでもらいたい。これを機会に文字に触れてもらえたら。」といっていました。

  実はソバンさん、この日はワークショップと掛け持ちです。



4)フンランおばさん復活

  2週間前から病気で休んでいたフンランおばさん(ニロード図書館員)が、昨日(月曜日)からオフィスに復帰しました。まだ顔は疲れ気味でしたが、もう大丈夫とのこと。

  「ニロードの母」であるフンランさんは子ども達からも大人気で、先週も「おばさんはどうしたの?」と子ども達から質問攻めにあいました。そのことをフンランさんに伝えると、フンランさんはほほ笑んでニロードに向かっていきました。



5)今週スケジュールと変更

ワークショップのスケジュールが変更になりました。

512() 青少年更正施設で移動図書館

513()  カンダール州でのワークショップ (先週行う予定が先方の都合で変更)

514()  カンダール州でのワークショップ、ゴミ捨て場での移動図書館

515()  カンダール州でのワークショップ


) 暑い

カンボジアは暑いです。みんな体だけは大切にしようといっています。