本を片手に、どこまでも。 -1190ページ目

SVAカンボジア図書館ニュース1999年6月1日

今日は子ども日です。基本的に今日オフィスはお休みですが、手束所長が帰国する日なので多くのスタッフがオフィスに集まっています。これからみんなで空港へ向かいます。いかに手束所長を泣かせるかを考えているスタッフもいます。

  今、空港から戻ってきました。手束さんもスタッフもなぜか笑顔の別れでした。と言うのも手束さんはお仕事でちょこちょこ戻ってくることをスタッフが知っていたからでしょう。空港には宗教大臣も見えられました。飛行機に乗る直前、手束さんは「図書館ニュース送って。」と言ってくれました。ありがとうございます。まずはメールのアドレスを教えてください。



1)図書館活動に新たなプロジェクトを導入?

  常設図書館や移動図書館では、おはなし、ゲーム、クイズ、踊りなどを行っております。この活動を更に活発にするために何かアイディアがないか、今日子どもの日のイベントに行く途中にチャントン、チャトラー、ポリー、ソポン、フンランさんに聞きました。

  するとチャントンは「カオイダンでJSRCが行っていたプロジェクトを復活させては。」というアイディアが出ました。温故知新。新しいものばかりを追うのではなく、昔行っていたプロジェクトの蓄積を大切にすることはいいことです。チャントンも「そのプロジェクトに関する資料は残っているはず・・」を言っていました。そこで鎌倉は「ところでどんなプロジェクト?」と聞いたら、一言「散髪」。

  鎌倉は一瞬自分の耳を疑ってしまいました。するとチャントンは続けて「カオイダンではJSRCは散髪をやっていたんだ。移動図書館に行くと、子ども達は「髪を切って」と言ってきたものさ。親とかも「家の子どもの髪を切って」と頼んできた。おはなしと散髪を組み合わせると一石二鳥。おはなしの後、髪を切ったらみんなさっぱり。それにニロード図書館やダイアット図書館(この二つはJSRCの常設図書館)の周りには散髪代もなくて髪を伸ばしっぱなしの子どもも多い。これでは衛生に良くない。家にハサミがあるのではないかって?大体ニロードの近くのスラムに暮らしている人はハサミもない人も多いよ。だから次にインストラクターを新しく雇うときは、散髪の出来る人がいい。」と真顔で言っていました。鎌倉はあまりの斬新なアイディアに言葉を失いかけました。

  カオイダンではJSRCのオフィスにパーマをかける機械もあったそう。ただ髪を切ってもらいたいときは移動図書館や常設図書館で切ってもらって、おしゃれをしたいときはJSRCのオフィスに行っていた、というのは本当でしょうか?まずはこの話の真相を知りたいです。



2)タクマオ幼稚園での子どもの日イベント

  今日は子どもの日です。いろいろなところで子どものための催し物が行われていました。図書館事業課のチャントン、チャトラー、ポリー、ソポン、フンランさんはカンダール州の州都タクマオ市にあるタクマオ幼稚園の展示会に行って来ました。

  タクマオ幼稚園はこじんまりした幼稚園です。校庭も子どもが70人、大人が50人入ればいっぱいで、窮屈になってしまうほど。今日はまずその校庭で子ども達によるイベントが行われました。まずは女の子達による「歓迎の踊り」。もちろん踊るのは幼稚園の子どもですから、小さい。一回ハプニングが合って踊っている途中で曲が止まってしまったのです。おろおろしながらももう一度曲がかかると一生懸命踊ってくれました。その後カンダール教育局長やJSRC側からの挨拶が続きました。

  また面白かったのは競争。まずは男の子と女の子のチームに分かれます。そしてスタート地点に立ってもらいます。3メートル先に透明なビン(ワインのビンくらい)を2つおきます。スタート地点には水の入ったたらいとその中にプラスチックのコップが入っています。子ども達は「よーいどん」の合図がかかったら水をコップに入れて走ります。そうしてその中の水をビンに入れます。スタート地点に他の子どもが待っていて、リレーのように他の子どもからコップを受け取ってから走ります。1回目は女の子チームが勝ちました。2回目は女の子チームがビンを落してしまったこともあり、男の子チームが勝利しました。

  素朴なゲームですけど、なかなか盛り上がりました。一番盛り上がったのは教育局の職員達でカンダール教育局長やタクマオ市教育局長はこの競争の最中、身を乗り出してました。そしてビンに水が入るたび「おお!」と声を上げていました。



3)ティーンワタナーくんによるおはなし (子どもの日イベントの続き)

  その後子どもがおはなしをしてくれました。おはなしをしてくれたのはティーンワタナーくん。それもJSRCから出版された絵本ナンバー12「息子と娘の結婚を祝うカラス」を使ってのおはなしです。ティーンワタナーくんはみんなに見つめられながら、絵本を1ぺージめくりました。絵本を広げると堂々と読み始めました。それまで大人のスピーチが続いて集中力を失っていた幼稚園児も、ティーンワタナーくんを見ています。先生方もJSRCのスタッフも息を飲みながらティーンワタナーくんを見つめていました。

  ティーンワタナーくんは絵本を広げて読んでいましたが、持ちにくかったのか絵本を半分に折りました。そうして絵の部分をみておはなしを続けたのです。(JSRCの絵本はだいたい左半分が絵で、右半分が文章)だいたいJSRCのインストラクターがおはなしをする時は、聞いている人に絵を見せて、自分は文章を見ながら(と言っても覚えているので、チェック程度)おはなしをするのですが、この場合は逆。でもティーンワタナーくんは話の内容を覚えていて、内容は絵本の通りでした。子どもは絵を読む力があることを再認識しました。

  ティーンワタナーくんといい、カンダール州スヴァイロミエット小学校の子どもたちといい、今自分達でおはなし活動をしている学校がいくつかあります。このイベントからの帰り道、図書館事業のみんなで「成果が見えてきた。」と言い合いました。

  このティーンワタナーくんのおはなしの風景をビデオに撮りました。是非機会があったら見てもらいたいです。



4)教材展覧会 (子どもの日イベントの続き)

  外でのイベントの後、幼稚園の中で展覧会がありました。カンダール州のいろいろな幼稚園が自分達で製作したものを持ちよっての展覧会です。部屋の中にいろいろな教材が展示してありました。

  どの作品も工夫されて良く作られていました。それも日常あるものをうまく使っていました。貝殻や木片に色を塗って作った算数ゲーム、折り紙(折り紙ようの色紙はないのでコピーの取り損じの紙やわら半紙を使っている)、空き缶を使って作った椅子。また、あるブースに立っていた違う幼稚園の先生は「私の働いている郡は何も無いけど、畑があるの!」といって見せてくれたのは、とうもろこし、こめつぶ、まめ、カボチャのたね、木の実。これを使ってクメール語文字の表やカメの絵を作っていました。「これだとお金がかからないのよ。そこらへんにあるのだもの。」と言って、一生懸命作り方を説明してくれました。

  ここの幼稚園の先生も以前JSRCが寄付した絵本を自分達写し、紙芝居にしていました。

  フンランさんは教材開発に興味があります。日本語で書かれた折り紙の本を見て研究し、折れるようになったという努力家でもあります。この展覧会も作品一つ一つ丁寧に見ていました。



5)図書館事業課 今週の予定



5月31日(月) ウィークリーミーティング



鎌倉プリンティングハウスでミーティング(福音館の絵本の件)


  子どもの日の準備

6月1日(火) カンダール州タクマオ市 タクマオ幼稚園で行われるイベントに参加

6月2日(水) ダイアット図書館、スダオカンレング小学校での移動図書館

            特別イベント スライドショーの準備

6月3日(木)    スヴァイリエン州出張(ワークショップのスケジュール確認、調査)

            ポリー クメール作家協会と絵本出版に関するミーティング

6月4日(金)    スヴァイリエン州出張

6月5日(土)    タクマオ病院にて移動図書館

SVAカンボジア図書館ニュース1999年5月31日

5月も終わりますね。早いものです。

 29日の図書館ニュースで鎌倉の「研修期間が終わった」と書きましたが、「試用期間が終わった」の誤りでした。試用期間が終わって、今3ヶ月の研修期間に入りました。



1)タクマオ病院に関するレポート

  先週の木曜日(527日)、チャトラーとソヴァンがタクマオにある子どものための心療内科医院に行って来ました。以前この病院に絵本を寄付したことがあるので、その本が現在どのように使われているかモニタリングを兼ねて行って来ました。また現在、チャトラーが自発的に子どもの権利と差別に関する調査を行っています。子どもの権利はチャトラーが興味のある分野らしく、本人が調査をしたいと希望を出してきました。

  カンボジアでも精神病患者に対する差別はあるようです。精神病は「きちがい病」と呼ばれ、家族は精神病をわずらっている家族がいると、この人を隔離して世間に知られないようにするのが一般的です。また家族の厄介者として家庭内暴力の対象になることもあります。2年前に鎌倉がこの病院を訪れたとき、「精神病を持った子どもに親が暴力をふるう。これが精神病治療の妨げとなる。これでは悪循環が繰り返されるだけ。」と先生が言っていました。

  以下はチャトラーの書いた報告書の翻訳です。



子ども心療内科医院で行った調査



日時 1999527日 (木)

場所 カンダール州タクマオ市 チェイチュムネア病院

参加者 医師、病院のスタッフ、患者



この調査の目的は精神的な病気を持つ子どもの状況把握と差別に関する情報を得ることである。



過去図書館事業課は何冊かの絵本とパズルゲームをこの病院に寄付した。時々、移動図書館も行っている。この調査の内容は以下の通りである。



1.治療に来る子ども達の数

2.子どもの症状

3.病院で絵本がどのように使われているか。

4.医師からの声



調査結果

  一ヶ月に平均300人の子どもがこの病院を訪れる。主な症状は、てんかん、発育の遅れ、言語の遅れ、うつ病などである。



  図書館事業課の絵本は待合室に置かれている。またプレールームにも置かれている。子ども達は治療が始まる前の時間、待合室で絵本を読むことが出来る。待合室で子ども達は好きな絵本を選び、自分自身で読んでいる。また絵本の貸し出しも行われており、子ども達は自分たちの家で本を読むことも出来る。プレールームは治療の場として使われている。ここでは「プレーセラピー」という治療や診察が行われている。子ども達は45分間このプレールームで自由に遊ぶ。その間、医師や看護婦が子どもの遊んでいる状況を観察し、その状況をノートに取る。この時間中、両親がプレールームに入ることは許されていない。



  医師は、「子ども達は絵本が大好きだ。」と述べた。この病院では子ども達に本の貸し出しをしているが、病院のスタッフがおはなしをすることはない。それゆえに、JSRCにもっと積極的に移動図書館にきてほしいという要望があった。また医師は、「おはなしは単に子どもを楽しませるエンターテーメントではない。他の国では、おはなしを心の治療ために使っている。また、絵本は子どもの患者の診察にも使われる。絵本を使って、記憶力などを診察、判断できるのだ。特におはなしは子どもの効果的なコミュニケーションを取るのに最適な方法であると信じている。」と述べた。



  我々は患者の両親へのインタビューを希望したが、その家族の気持ちやプライバシーを尊重しなければいけないと言うことで断られた。精神病患者を持つ家族は、誰かにその事実を知られることを恐れている。彼らは家族以外には、精神病を患った患者がいることを告げない。この習慣は、この病院の治療にも影響を与えている。患者の状況を正しく告げられなければ、医師は正しい判断を出来ないからだ。また患者の家族は、他の人に子どもをこの病院に連れて来ているということを知られるのを恐れている。もし他の人に知られれば「あの家族には精神病を持った人がいる。」と思われてしまうからである。それだけ精神病を持った人は世間的、社会的に差別の対象とされているのである。


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 ティム・チャトラー(図書館事業アシスタントコーディネーター)



2)他の団体の図書館事業  (SIPAR)

  SIPARはフランスのNGOで、JSRC同様常設図書館の運営と絵本出版を行っています。常設図書館は4州と1市(カンダール、コンポンスプー、コンポンチュナン、プレイヴェン、プノンペン市)に24つ設置され、すべて小学校の中に置かれています。来年は24の図書館をハンドオーバーし、新たに30の図書館を支援する予定です。SIPARの常設図書館は3年周期でハンドオーバーとなります。3年間の内に、小学校の図書館員は自分で運営が出来るようにならなければなりません。その為にSIPARは図書館員を対象にトレーニングを行っています。常設図書館設置の基準は、「やる気のある学校であること。3年のハンドオーバーが守れること」です。

  また絵本の出版もしています。現在までに27タイトルの絵本を出版しています。JSRCは1タイトルにつき3,000部を刷りますが、SIPARは1タイトル1000部を印刷しています。またフランス語の絵本に翻訳を貼りつけ、配布も行っています。「翻訳がない本もたくさん届けられるのよね。」と図書館事業のコーディネーターMs.Boissyが言っていました。JSRCは今年度、日本で出版されていた絵本をクメール語訳し、それをカンボジアで印刷しましたが、SIPARはまだそのような絵本は出版したこのがないそう。「やっぱり著作権が問題。手続きだって時間がかかりそうだし。曹洞宗はどうやって印刷までこぎつけたの?」と逆に質問されてしまいました。

  SIPARの図書館スタッフはみんなフランス語が話せるそうです。JSRCの図書館スタッフは日本語の挨拶は出来ますけど・・。

  絵本の配布は基本的に24の常設図書館にしか配布をしていません。配布する本はSIPARで印刷した本の他に、Redd Barnar やJSRCなど、他の団体から絵本を購入して配布します。



3)SIPARのスタッフ育成

  SIPARの図書館活動のスタッフトレーニングについて聞いてみました。「図書館チームの中にはフランスに送ってフランス語や図書館事業の見学をしてもらったスタッフもいます。ただフランスの図書館はこことは全然違います。図書館の中の雰囲気も、システムも違うでしょう。コンピューターで本を検索できるのですもの。だけど将来の参考にはなるでしょう。」Ms.Boissyは「去年フランス人の図書館員が2ヶ月ここに来て、図書館活動に同行しました。最初はフランスとここの違いに戸惑ったみたいだけど、やはり経験もある方だったのですぐに馴染んでいました。この期間中、フランスの図書館学をカンボジアに合うようにアレンジしてくれて、スタッフに伝えてくれました。これはカンボジアのスタッフにも役に立ったみたい。その図書館員も満足してくれました。だから次からは、カンボジアに専門家を呼ぶようにしたい。そうすればトレーニングを受ける受益者も増えるでしょう。」と付け足してくれました。



4)What`s next? 次のステップ

  SIPARとのミーティングは初めてだったという事もあり、お互いがお互いの活動を説明して終わってしまいました。(2時間はミーティングをしたのですが、最後はカンボジアでの生活とかお互いの国の話になってしまいました。)

  ただお互い似ている活動をしていること、これからも常設図書館や絵本出版に関して意見や情報交換をしていくことを約束し合いました。来月SIPARのスタッフがニロード図書館とダイアット図書館の見学をしたいという希望がありました。JSRC側もプノンペンとカンダールにあるSIPARの常設図書館を視察しに行きます。絵本の質に関して、Ms.Boissyは「私達がJSRCの本を購入するのは子どもたちがJSRCの本を好きだからよ。でももっと意見を聞きたいのだったら、もう一度ミーティングを持ちましょう。」といってくれました。SIPARのクメールスタッフが時間を作ってくれるそうです。来月、意見交換と絵本の合同評価を行います。

SVAカンボジア図書館ニュース1999年5月29日

1)図書館用語辞典

  昨日「アジア子どもの家」事業課の通訳であるソムナンさんとチャトラーと私でクメール語と日本語の通訳のことについて話しました。なぜこの話になったかというと、来年の3月に行われるおはなしきゃらばんセンターのセミナーの通訳をどうしようと鎌倉は心を悩ませているからです。まだずいぶん先の事のように感じますが、一年なんてあっという間に立ってしまいます。鎌倉は結構心配性なのです。

  ソムナンさんは日本語検定2級の持ち主。今年は12月の1級の試験を受けるそう。ただカンボジアでは1級検定のための学校はないので独学中。すごい。カンボジアでは日本語検定の試験も行っていないので、「タイかベトナムに行かないと。」といってました。チャトラーに「3月のセミナーは日本語とクメール語の通訳を頼むよ。」と言ったら、「セミナーにはアジア子どもの家のスタッフも参加するし、ソムナンがんばって。」と早速仕事の依頼をしていました。この通訳話は盛り上がり、6時半ぐらいまで話していました。

  昔大学に入ったころ、英語がなにも分からなくてかなり苦労しました。(別に英語が好きでアメリカに渡った訳ではなく、青少年福祉の勉強がしたかったのです。)渡米して3ヶ月が経った頃、日本の両親から一冊の本が届きました。本の名前は忘れましたが、「10個の動詞を覚えるだけで英語が話せるようになる。」という、期末テストの勉強をなにもせずにテレビばかりを見ていた学生が英語の試験の前の日に藁をも掴むような気持ちで開く本のような印象を与える本でした。しかし、これがなかなか役に立ったのです。動詞「be, have, make, take, bring, let.」など基本的な動詞を押さえておけば、確かに応用はきくのです。そこから鎌倉が学んだこと。それは「ある一定の単語を押さえておけば、一時的にはどうにかなる。」ということ。もちろん先を考えると単語の数は増やしていったがいいのですが。

  そこでチャトラーと私は、「図書館事業には図書館事業の言葉がある。」という結論に至りました。図書館事業でよく使う名詞、「図書館、図書館員、先生、僧侶、学校、寺、住民、委員会、教育、文化、芸術、教育省、教育局、本、絵本、教材、書類、統計、知識、経験、能力、反応、影響、活動、仕事、想像、計画、目的、将来、夢」。そして動詞「行う、作る、持ってくる、行く、来る、話す、読む、聞く、書く、描く、変更する、通訳する、(コンピューターを)うつ、確認する、評価する、調査する、おはなしをする、歌う、踊る、食べる、飲む、頼む、伝える、交渉する、整頓する、まとめる、入学する、卒業する、上がる、下がる」を押さえておけば、一時的にはどうにかなります。

  これから時間のある時に、鎌倉自身のためにもこれらの単語を用語辞典としてまとめたいと思います。チャトラーからの要請もあり日本語(ローマ字付き)も書いて、クメールスタッフとシェアーできたらと思います。


2)研修期間終了

  遂に鎌倉の研修期間が終わりました。(528日まででした。)ありがとうございました。