しておられる方々、まァ企業で社員と呼ばれてる方は54歳といえば
やれ早期退職だ、関連企業に出向だ、居残れば給料大幅ダウンだ、と
無理やり人生の第二章を迫られておられるようですが、
私はといえば、「漫画界へカンバックじゃ!」と
いい年こいてほざいておりますよ。いまだにね。
漫画界の人たちが聞けば「フンッ アホか」と
一笑にふされるようなことに、本気で挑んでおります。
それほどに、生き残るのが厳し~い世界なのです、漫画界は。
特に私が、再起しようとする青年誌ともなれば
どの漫画雑誌も赤字つづきで、まるで売れてませんからね。
東京在住の現役漫画家もろくに養えないのに
地方のおっさんまで面倒見れるか!というありさまで
なかなか相手にされませんよ。実際の話が。
世間さまにはあまり知られてないようですが
漫画雑誌!売れてません!っ青年誌どころか
少年誌でも黒字なの少年ジャンプと少年マガジンくらいですよ。
少年サンデーなんかヤングマガジンに発行部数抜かれてましたからね。
90年代後半くらいから雑誌全般が売れなくなり
漫画雑誌もご多分に漏れず、下降の一歩をたどっております。
漫画家でも稼いでいるのは、作品がアニメ化されて
ヒットしている方々だけで、少年マガジンに新連載した漫画家が
赤字続きで大変だ。なんて聞いております。
なんせ仕事場の部屋代やアシスタントの給料などの出費を
合わせると月々かなりの額になりますからね
それなのにコミックスが売れず初版のみとなると
間違いなく赤字になってしまいます。
出版物の電子化への過渡期ということですが、
まだ対策がみつからないようですな。
そんななか、こりもせず「カンバックじゃ~」と言い続けて、
今年頭から勝負にでようと、昨年末から ちと無理しすぎたようで
体のあちこちが傷んでしまい絵が描けず「待機」を余儀なくされており、
ならばと、ビデオ観たり本読んだりしておりますが図書館で
やなせたかしさん の本を見つけて初めて読みました。
「アンパンマン」の作者のやなせさんです。
私ね数年前、知人に教えられるまで、やなせさんが
漫画家だったって知りませんでした。
雑誌「詩とメルヘン」の編集長で童謡「僕らはみんな生きている」の
作詞家という知識しかなく、漫画界の人だとは思いませんでした。
いや申し訳ないこってす。
手塚治虫さんの先輩だそうです。やなせさん。
私は手塚さんの孫弟子(師匠が手塚プロ出身です)にあたるので
手塚さんより上の世代の方とは、交流がありませんでした。
まァ言い訳ですが、だからしらなかったんですね。
「やなせたかし 明日をひらく言葉」というタイトルの本ですが
やなせさん、づっうううと漫画家として代表作がないことに
60歳過ぎても、苦しんでおられたのですね。
「詩とメルヘン」という雑誌の企画から全てやなせさんが
創られた雑誌でそれ自体素晴らしい仕事をされており
「僕らはみんな生きている」という歌も時代を超えた名曲です。
それでも、
自分は漫画家なのに、作品が一本もないと苦しんでいたそうです。
アイデンティティが漫画家なのですね。
アンパンマンは54歳の時、絵本で出版されました。
アンパンマンではなく、ひらがなで「あんぱんまん」です。

今や知らない人はいない「アンパンマン」ですが
発売当初からずっと、大不評で大人たちからは
「顔を食べさせるなんて気持ち悪い」と言われ
出版元からはあんなもの二度と描くなとまでいわれたそうです。
では、そうまで酷評された作品がいかにして国民的アニメに
なっていったのか?それを成し遂げたのは、といいますか
アンパンマンの素晴らしさをスグに見抜いたのは
幼稚園の「園児たち」だったのです。
大人たちにコケ下される「あんぱんまん」が
幼稚園では一番人気で、どの幼稚園でも本が取り合いに
なってボロボロになってしまってたそうです。
この事実を知ったアニメのプロデューサーが根気強く
企画を出し続け、出版から15年後
やなせさんが69歳の時にアニメ化が実現しました。
後はご存知の通り、まだあまり言語で生きてない世代に
比類なき支持を受けておりますね。
友人のまだ一歳になったばかりの男の子が
ろくに言葉も喋れないのに、アンパンマンのアニメが
始まると「あんまん!あんまん!」叫びながら
踊りだすのだそうです。
「アンパンマン」は他の、悪者を力で退治するヒーローたちと違い
困っている人たちを助けるヒーローなのですね。
戦争を体験しているやなせさんは、戦後やってきた
力で悪者のやっける「スーパーマン」というヒーローに
強い違和感をもたれたそうです。
ヒーローの心は献身と愛で満たされていなければいけない。
ずっと、そう思われていました。
戦争で飢餓がいかに辛いかを知っているので
食事にもおやつにもなるアンパンをモチーフに
自らも、顔を食べさせるという行為で傷つき、力を失いながらも
弱者を助ける、「かっこ悪い悲しみのヒーロー」として
生まれたのが「アンパンマン」だそうです。
力による正義は、真の正義ではない。
作家はそんな安易なものを生み出してはいけない。
このやなせさんの真摯な気持ちを受け取ってくれたのは
感受性の錆び付いた大人たちではなく
身体は小さくても、真の優しさの感じとれる6歳までの
人類だったのですね。
少し長くなりましたが、「やなせたかし 明日をひらく言葉」より
「悪夢のような大震災から三日後
ラジオにアンパンマンのマーチを流してください。
というリクエストがあり、さっそく放送したところ
子供たちが大コーラスを始めた。
大人たちも涙をこぼして感動した。
それから、ラジオ局は連日、この歌をながした。
そのニュースを聞いてすぐ
被災地に激励のポスターを送り、
チャリティーコンサートも始めた。
震災で大きなショックを受け、まったく笑わなくなった子どもが
アンパンマンのポスターを見て笑い出し、
それを見たお母さんが泣き出したというニュースも届いた。
ぼくの生み出したアンパンマンがこんなときに
少しでも役にたったとすれば、本当にうれしい。」
時代がどう移り変わろうとも
人には、物語が、それを伝える本が必要なのだと思います。


