患者は、70歳代女性。
 主訴は、非貴金属に対するアレルギーおよび審美的な不満と発音困難。

 担当医は、患者の金属アレルギーに対し上顎全部床義歯は口蓋部分に生体親和性が良好な金合金の金属床を選択した。

 下顎部分床義歯は、大連結子は上顎と同様に生体親和性が良好な金合金の金属床を選択し、4⏇4までをメタルアップとした。また43⏉34間にメタルフック、4⏉4遠心にメタルレスト、3⏉3までノンメタルクラスプを使う設計とした。
 患者に診察の結果および義歯の設計と使用する材質、治療手順を説明し同意を得た。

 弊社に技工指示書、上下顎作業用模型(図1、2)およびバイトが届けられた。

(図1)

(図2)

 

 担当技工士は模型製作、咬合器付着をして担当医の指示通りに金属床を製作し人工歯配列を行った。

 担当医によって口腔内での試適が行われ、咬合圧で粘膜面の機能印象を採得した。
 担当技工士は、下顎作業用模型の欠損部を削除し、機能印象された蝋義歯を作業用模型に戻し欠損部分に石膏を流し模型を製作した(アルタードキャスト法)。その後良好だった状態を保ちながら、慎重に上顎貴金属全部床義歯および下顎貴金属床ノンメタルクラスプ併用義歯の症例を完成させた(図3〜9)。

(図3)

(図4)

(図5)

(図6)

(図7)

(図8)

(図9)

 

 後日、担当医より連絡があり「患者さんが金属アレルギーがあるとおっしゃるので、チタン床をお勧めしましたが、チタンの色が気に入らず、金を希望されました。未だに金は根強い人気がありますね。実際、貴金属床の装着感は非常に良いようで、大変満足されていました。ただ、現在の金価格を考えると、誰にでもお勧めできる義歯ではないですね」とのお話でした。

 

 担当技工士 義歯部スタッフ一同