自閉症スペクトラム(ASD)の子など、発達障害の子を観察していると、「相手の気持ちがわかっていないな」と思うことがよくあります。
「客観的に見られない」とか「第三者的に見られない」、「空気が読めない」などと表現することもありますが、具体的にどういう心理状態なのか?どのような認知能力が発達していないのか?を考える時、あるいは説明するときに便利でよく出てくるものがあります。
その一つ「サリーとアン課題」と呼ばれるものを紹介します。
サリーとアンという女の子が登場するのでそう呼ばれますが、今回は「アイちゃん」「ハルくん」に名前を変えて紹介します。
文字の識別が苦手な子のために、紙芝居や人形劇で示すのもよさそうですね。
ASDの子の多くは、このサリーアン課題(ここではアイハル課題)が苦手です。「箱!」と答えてしまいます。
自分はこの課題を見ていたからボールは箱の中だと知っているが、アイはそのことを知らない。この違いを理解するのが難しいようです。
このアイハル課題、「なるほどASDの子はこういうことが認知できていないのだな」とイメージしやすいものですが、個人個人で認知能力に差もありますし、白黒はっきり差が出るものでもないようです。
それに子供はそれぞれ個性があります。見ていればこの子がどの程度の認知能力があるのかわかります。みんなに課題をやらせて線引きするような必要もなさそうです。
ただ、「どのような心の状態なのか?」を理解するためには便利です。
他にもあります。
「マキシ課題」・・・お菓子を買ってきたマキシと母親が登場。マキシが遊びに行っている間に、母親がお菓子を戸棚に隠してしまう。マキシが帰ってきたときに、どこを探すでしょう?といったものです。サリーアンと同じですね。
「スマーティー課題」・・・ポテトチップスの箱を見せて「この中に何が入っている?」と聞きます。当然「ポテトチップス」と答えます。でも「中身は鉛筆でした」と言って鉛筆を出して見せます。「さて、この箱をA君(だれでもいい)に見せたら何が入っていると答えると思う?」
(こんな風に一対一でのやり取りをします。A君の立場で考えられるかを問う課題です)
「罪のない嘘課題」・・・ヘレンは誕生日プレゼントはウサギが欲しいと願っていました。ウサギを飼いたくて仕方ありません。でも誕生日にもらったのは絵本でした。ヘレンは両親にこう言いました。「ありがとう!絵本が欲しかったの!うれしいな!」
ヘレンは本当のことを言ったのでしょうか?
この場合、20代のアスペルガー症候群の青年はこう答えました。「ウソの気持ちです」一見、正しく認識しているようですが、(なぜうそをついた?)との問いに「家族を困らせないように」。(なぜ本心を言うと家族が困るの?)の問いには「ウサギはお金がかかるからでしょうね。養育費、エサ代など」と答えたそうです。
理由として金銭的な理由を挙げたことなど一つの典型かと思います。
他にも紹介できるものがあれば、いずれ紹介してみたいと思います。