クリスマスイブは、黒沢・安達にとって大切な記念日なので、やっぱり妄想しちゃいますよね。

今回は、今まで書いた27・29・30とかの続きになります。

ずっと下になって、自分でもどこに埋もれたかわからなくなってしまったので、最後にリンク貼っておきます。

 

クリスマスイブのタイミングを逃しちゃいましたが気にしませんよ。

あくまでも、二次創作の妄想ですので 。

 

 

 

「安達くんたちはクリスマスイブはどうするの?」

ラウンジで一緒にお昼を食べていた藤崎さんが唐突に聞いてきた。

いつも昼休みは黒沢と六角も一緒に過ごすことが多くなってきたが、今日は藤崎さんと二人だけだった。

安達は一瞬返事に困ったが、

「え?今年は、その、黒沢んちでゆっくり・・・」

戸惑いながら答えると、藤崎さんが意外そうに驚く。

「今年こそ花火デートに行くのかと思った。夜景のキレイなレストランとかイルミネーションとかも、黒沢君、そう言うの好きそうなのに」

(確かに優一は大好きだよな、そう言うの。でも、今年はオレがそうしたいって言ったから・・・)

安達が黙っていると、

「安達君、最近元気ないけど、どうしたの?」

藤崎さんが心配そうに安達の顔を覗き込む。

「え?いや・・・」

「マリッジブルー?」

安達が返事をするより先に、藤崎さんが真剣な顔で聞いてきた。

「な、な・・・んで?」

「幸せな時が一番不安になることってあるからさ。安達君、大丈夫かなって」

「そ、それより、藤崎さんは六角とどうなの?」

藤崎さんの勘の鋭さに戸惑いながら、安達は焦って流れを変えようと六角の話を振る。

「それが、聞いてよ~」

それまで笑顔だった藤崎さんが、不機嫌そうな顔になった。

 

花火デートの予定だったが、藤崎さんの母親が田舎から出て来ることになり、クリスマスイブは六角と三人で食事会になったと文句を言う。

しかし、安達からは、その割には藤崎さんはあまり怒ってはいないように見えた。

「安達君に彼氏のフリしてもらうって話もあったよね?」

安達は、以前に藤崎さんから母親が凄く心配しているという話を聞いたことがあった。

「あれからもう一年以上経つんだね。あの時は全然結婚なんて考えてもみなかったんだけどな」

そう言う藤崎さんの左手の薬指には婚約指輪が輝いていた。

 

 

「黒沢先輩は、クリスマスイブは安達先輩と花火デートですか?」

黒沢は六角と営業から戻る途中だった。街はクリスマスのデコレーションに溢れ、話題は自然にクリスマスイベントのことになる。

「去年は中止になったじゃないですか?今年はリベンジですよね」

六角が立て続けに聞いてくる。

「いや、今年は家でゆっくりすることにしている」

黒沢はできるだけ平静に答えたが、あまり触れて欲しくない話題だった。六角が言ったように、去年行けなかった花火デートと夜景がキレイなレストランに安達を誘おうと思っていたが、

(今年は部屋で二人きりでゆっくりしたいんだけど)

安達がそこまではっきり言ってくるのは珍しく、黒沢は渋々と承知した。

(最近はほとんど俺の部屋に泊まってるのに、いまさら。でも、清は俺に甘えたがってるのかな)

そう考えると、黒沢はそんなクリスマスイブの過ごし方も良いなと自分に言い聞かせていた。

(今年はとびきりのサプライズを用意してるしな)

そんな黒沢の心境を知らずに、

「最近、安達先輩も元気ないし、まさか倦怠期ってやつスか?」

六角は黒沢の期待感を打ち消すようなことを平気で言ってくる。

「どうしてそうなるんだよ。それより六角はどうなんだ?藤崎さんをちゃんとエスコートしろよ」

黒沢は呆れながら、六角の方に話を振った。

「それが、聞いてくださいよ~」

 

 

六角が、今年こそ花火を楽しみにしていたのに、藤崎さんの母親が上京してくることになり予定が変更になったとこぼす。

「それは残念だな」

さすがに黒沢は六角に同情したが、

「一応、お正月明けに挨拶に行く予定だったから、それが早くなっただけなんですけどね」

意外に、六角は言うほど落ち込んではいないようだった。

「なにしろ、将来、俺の義理の母親になるんスから」

黒沢が六角を見ると、いつもの軽い雰囲気は全然なかった。

 

 

クリスマスイブの夜、黒沢は前日から下ごしらえをしていた料理を仕上げ、ワインとグラスを用意しながら、安達がテーブルに駅前の花屋で買った白と黄色のバラの花をセッティングしている様子を伺っていた。

(いつもどおりに見えるけどな・・・)

六角に言われるまでもなく、黒沢も最近、安達が少し元気がないことに気づいていた。年末で残業が続いていたせいだろうと思っていたが、気になり始めるとネガティブな考えしか浮かんでこなかった。

(確かに、今日は話しかけてもあまり乗ってこないなぁ)

黒沢は、一年前、一時期とは言え安達と別れてしまったことを今でも後悔している。

(あの時は自分だけ浮かれて、清が悩んでいることに気づいてやれなかった。まさか、これはあの時みたいな・・・)

安達の方も、ずっと考えていたことが頭から離れずにいた。そのため、つい無口になっていたことさえ自分では気づいていない。

(優一にあの事を話すのは今夜しかないよな)

「優一、これ、ここに置くけど」

安達がセッティングの最後に、バラの花の脇に指輪のケースを置く。

 

 

準備を終えて食事を始める前に、黒沢と安達には大切な儀式があった。

二人で選んだペアリング。初めて二人で着けて過ごしたのは、安達の31歳の誕生日だった。

黒沢はいつも指輪をしたがったが、安達の方はまだ人前でする決心がつかず、大切な日や週末の夜だけ着けて過ごすことにしていた。

そして、今夜は二人にとって特別な日だった。

いつものように黒沢がエスコートするように促すと、安達が黙って左手を差し出す。黒沢はその手を取って、うやうやしく薬指に指輪を嵌め、指輪の上から手にキスをする。

次に安達が黒沢の指にも指輪を嵌める。キスはないが、嬉しそうな笑顔を黒沢に向ける。

(良かった、いつもの清だ)

安達の笑顔を見て、黒沢は胸をなで下ろした。

(よし、あとはサプライズのプレゼントだ。きっと喜んでくれるよな?)

 

 

しかし、黒沢がサプライズのタイミングを伺っていると、食事の途中で安達が手を止め唐突に話を切り出した。

「優一、大事な話があるんだけど、いいか?」

思い詰めたような安達の口調に、黒沢はまた一年前のことを思い出し不安になった。

今夜の安達は、あまり飲まないワインもいつもより早いペースだった。それがなおさら黒沢の不安を煽る。

「清、どうかした?どこか具合でも・・・」

安達は、その黒沢の心配を無視して席を立つと、リビングのローテーブルの引き出しから封筒を出してきて、黒沢の前に差し出した。

封筒は区役所のものだった。訝しがりながら黒沢が中を確かめると、一枚の紙が入っているのに気がついた。黒沢がそれを確かめるのを、安達は今までにない真剣な表情で黙って見ていた。



「え?」

黒沢が取り出したのは、婚姻届だった。

「清、これ・・・」

「正式には無理だけど、二人で書いて持っていたいんだ」

黒沢は驚きのあまり言葉が出なかった。そして、少しの間をおいて、「ハハ・・・」と気が抜けた笑いが出た。

「なんだよ、笑わなくても」

「いや、そうじゃなくて」

安達がムキになるのに黒沢が慌てて言い訳をすると、

「だって、優一は俺のこと好きだって言って、ホントに優しくしてくれるけど、それなのに、俺はビビりで人前で指輪をする勇気もないから」

安達は泣きそうになるのを頑張って堪えていた。

「それが優一を傷つけてるんじゃないかと思って」

「それで元気がなかったの?」

黒沢は最近の安達の様子に、ようやく納得がいった。

「だから、優一に俺の気持ちを伝えるのに、これしか思いつかなくて」

黒沢がテーブル越しに両手を伸ばして、震えている安達の左手を優しく包み込む。

「笑ったんじゃないよ。あまりにも驚いて。まさか、こんな凄いサプライズがあるなんて、嬉しすぎるよ」

今度は黒沢が鞄から封筒を取り出す。

「清を驚かそうと思ってたけど、俺の方のサプライズは霞んじゃったな」

黒沢は不動産会社の名前が入った封筒からマンションのパンフレットを出して安達の前に広げた。

「清、最近はほとんどここに泊まってるだろ?だったら、もう一緒に住んだ方が良いかなって思って。ダメかな?」

泣くのを必死で我慢していた安達は、とうとう涙が堰を切ったようにあふれ出してきた。

「あの・・・、普通の小さいマンションだからね。期待し過ぎないでね」

そう言いながら、黒沢は安達を強く抱きしめた。

 

 

「へぇ~、六角が?」

夕食の片付けも済んで、二人でソファで寛ぎながらマンションのパンフレットを見ていると、黒沢が今日の六角の話をした。

「あの六角でも、結婚となると考え方もしっかりしてくるんだな。責任感て言うか、見直したよ」

それを聞いて、安達も藤崎さんの話を思い出していた。

「結婚て、自分たちだけのことじゃなくて、家族とか、考えることがたくさんあるんだろうな。六角も藤崎さんも凄いな」

自信がないような安達の言葉に、黒沢は安達の肩を抱き寄せる。

「大丈夫、俺がついているから。無理しないで二人で少しずつクリアしていこうね」

「ん・・・」安達も黒沢を信頼して身体を預ける。

「まずは、清がここに引っ越してくるって言うのはどう?それからゆっくり部屋を探しに行こう」

「え~っ、狭くなるだろ?」

「狭い方が、それだけ清が近くにいるってことだろ?俺はむしろ嬉しいけど」

黒沢の真剣な口説きに、安達が笑う。

「なんでいつも、そんな恥ずかしいことを平気で言えるんだよ?」

黒沢も笑いながら左手を安達の左手に重ねる。

「いつかは清のご家族にも挨拶をしないとね」

安達は小さく頷く。

重ねた二人の手には、ペアリングが輝いていた。

 

 終わりです。


ちょっと、照れながら書いてました。

私には、初めての指輪交換なんてドラマチックなシーンは書けませんよ(笑)

とにかく、ラブラブな黒沢と安達を書きたかったんです。

あ、クリスマスイブのキャンドルは安達に却下されたと言うことで。


 

もしよろしければ、こちらもどうぞ。

勝手にチェリまほ27 花の日 

 

 

 

あと、「ハンコの日」(すみません、ずっと下の方にあるはずです)にも「婚姻届」のネタが少し入ってます。 

 

 

安達が恥ずかしがって指輪をしない件ですが、ドラマでそんな感じでしたよね。

以前の30「ペアリング」で指輪を買いに行くシーンを書きましたが、「きのう何食べた?」見てて、意外に同性同士でも気にしなかったりするんでしょうか?お店にとってはお客さんだろうし。

その辺りは、あくまでも私の妄想ですから。

 

 

私の妄想も39まできました。サンキューです。

映画化も決定したし、本編で続きが見れるなら、もう妄想はしなくてもいいかも。

でも、ちょっとだけ自分の好みのシーンを妄想するかも。


なんてことを考えてる年末です。ちなみに、キリが良いように40まで下書きがあります。

 

 

今日のBGM

Yoshii  kazuya『39108』(サンキュー カズヤ)

39つながりなだけですが、大人のロックが詰まった傑作アルバムですよ。

早くコロナが落ち着いて、モンキーさんやヨッシーさんのライブに行きたいなぁ~。

もちろん、劇団EXILEさんの公演や「チェリまほ THE MOVIE」のイベとかも。