「突然の問い合わせをお許し下さい。私は、貴校の卒業生の黒瀬と申します(中略)
1 誰が何の目的で風呂敷の採用を決めたのでしょうか?
2 今でも風呂敷を購入することは可能なのでしょうか?
3 コラムに掲載可能な風呂敷登校生徒の写真をいただけませんか?(中略)」
何と、校長先生自らの回答が届き、
1 不明
2 今はもう作っていないので残念ながら買えない
3 地元の新聞や、学校の刊行物などで紹介された写真のコピーが添付されていた。
お役に立てずに申し訳ないとの言葉まで添えられており恐縮の至りだった。
「1期から6期くらいまでは、教科書等は学校に置いていた。広島学院初代校長でドイツ人のシュワイツェル先生は“勉強は学校で、家に帰ったら家の手伝いをすること”を奨励していた。よって登下校は弁当程度の持ち物でよく、そのくらいの荷物であればわざわざ高価な学生鞄を買う必要は無く風呂敷で十分」との判断だったのである。
また校長先生のメールには、2人の生徒が、風呂敷を手に微笑む写真が添えられていた。
まさに、Sustainable!
広島学院創立50周年記念品に 作った復刻版の風呂敷を、 入学時に記念品として受け取った 最後の学年のうちの二人が、 昨年2023年の高校3年生まで 風呂敷登校してくれていました!
戦後、物のない時代に
学校の通学鞄の代わりとして
使われた日本の風呂敷ですが、
令和の今、改めて新しく
サスティナブルなツールとして、
彼らのように感じで使ってくれる
若者が増えてくれるといいな!
SDGsの潮流の中、風呂敷が見直される機運があると聞く。かさばらない布切れなので、鞄やバッグに常時しのばせていることはあるだろうが、毎日書類や荷物を包んで風呂敷を携行している人は、さすがに多くないと思う。そこで自身の経験から、風呂敷がカバン代わりという日々を報告したい。
今から50年程前、私は広島県のとある中学・高校に通っていたが、その6年間、雨の日も風の日も、風呂敷で通学していた。私だけでなく、その学校の生徒全員が風呂敷だった。
1960年代の通学風景
まずは、そんな私の母校について簡単に紹介しておこう。
広島学院中学校・高等学校は、カトリック男子修道会のイエズス会が母体となり、1956年に、広島市古江(現・西区古江)の丘の上に設立された中高一貫の男子校だ。同時代の他校に比べても服装や髪型は厳しく指導されていた様に思う。その毎日に風呂敷は必携だった。正確に調べた訳では無いが、日本で一番最近まで風呂敷通学していた学校だと自負している。(1984年4月に風呂敷自由化が発表された)
制鞄ならぬ制風呂敷は、約80センチ四方の濃紺の厚手の木綿で出来た物で、一隅に帯状の紐が縫いつけられていた。 80センチ四方の濃紺の厚手の木綿生地。 一隅に紐が縫いつけられているのが特徴。(広島学院の中間校長から届いた復刻版)
それが、上級生になるにつれて、分冊(要は、教科書を分解)などの工夫を凝らし、セカンドバッグもフル活用し、徐々に風呂敷はコンパクトになっていった。授業のない試験期間中など、消しゴムだけを包んだ風呂敷を腕に巻いて、楽をしたこともあった。それでも、風呂敷携行は必須だった。
不携行で先生に叱られることの多かったY君は、対策として、ダンボールの小片を詰めたミニチュアの風呂敷を自作し、スポーツバッグにキーホルダーの様に結び付けた。それ位、風呂敷は絶対だった。
そのように、中高の多感な時期を、風呂敷と一緒に歩んできた我々なのだが、実は、最も根本的な疑問を持ち続けたまま卒業し、いまだ答えを得ていないことに気がつく。一体、誰が何の目的で、風呂敷を採用したのかという問いだ。当時の生徒手帳には、制服や制帽の決まりはかなり細かく書かれているが、鞄の記述は一無い。
とは言え、“校長先生でも知らない”となると疑問は膨らむばかり・・
そのことを同期の連中に伝えると、S君からこんな過激な提案が、“「フランシスコ・ザビエルが風呂敷に日本人の良心を見出し、日本のイエズス会士に使用を勧めた」と話をでっち上げて伝説を作ろうぜ!”、事実を重んじるべき元裁判官とは思えない発言に驚いた。
また、スキーを楽しみ、首都圏在住の同窓生の美術館・博物館巡りを主催する、同期で最もアクティブなM君からは、「今でもあの風呂敷を大切に使っているので、写真を送るよ。紐は無いけどね」という嬉しい連絡も。
遂に、謎が解けた。
我々14期生は直接その薫陶に接する機会は無かったが、初代シュワイツェル校長の言葉の持つ温もりは伝わってくる。もしかすると、若かったあの頃に聞くより、親の立場となった今聞くからこそ、響いてくるのかも知れない。
風呂敷は古くからあるけれど、
使い方を知れば、実にエコで
サスティナブルで新しい、
世界に誇る日本の道具。
老若男女、どなたにもお勧めですが、
是非、若者や子供たちに
風呂敷を使ってもらいたい!
使い方がわからないなら、
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