作家アリス長編『46番目の密室』再読
1992年のクリスマス・イブに、北軽井沢にある密室モノの巨匠・真壁聖一の別荘に去年から招待されていたアリスは、数か月前の電話でのやりとりで、真壁に犯罪学者の友人の話をしたところ、ぜひその友人もクリスマスに招待したいと誘われ、火村の講義が終わってすぐ二人で北軽井沢へ。
クリスマスパーティー中、話しが盛り上がっていた中、いきなり不機嫌になる真壁に戸惑い、パーティーはお開きになるが…
『46番目の密室』
有栖川有栖作品を出来るだけ全部一気に読書感想文上げようと決めた時には、クリスマスがとっくに過ぎていたので、これだけ2025年のクリスマスに上げようと思ってました。作家アリスシリーズ第一作目。
珀友社で真壁とすれ違って一目で気に入られたアリスが、電話でのやりとりをするようになって、一年前にはじめてクリスマスパーティーに招待された。アリスは27歳デビューでこの時32歳なので、29~30歳の時に真壁に気に入られたのかな?真壁のデビューがゴールド・アロー賞受賞なので(アリスは佳作入選)、アリスが佳作入選した時に選考委員はしていないにしても、デビュー作出版後に読んでその時から気に入ってくれていたのかもしれませんが、アリスって男にやたらとモテるなって思う(そういう意味ではなく)こういうところに江神二郎を感じます。江神は少女にもモテますが(小学生にモテるのは一緒)。
火村が学生に↓を読んだことは?と訊いて一人もいなくてガッカリしていたけれど、アリスも読んだことがなかった。火村は大学生時代に既に読んでいたっぽいから(『探偵、青の時代』)、その時にアリスに薦めてあげなかったの??と思って、実際に買って読んでみたんですが、近親相姦のオンパレードは火村の講義内容から察していましたが(ハプスブルク家みたいなのか、狭い閉ざされた村だったから血が濃くなったとか、愛した人が近親者になってしまう一族だったとか近親相姦にも色々ある)、登場人物のほとんどが脳と下半身が直結しているような人達のオンパレードでした(ただただ性欲が強い人だらけ)。火村はコレをアリスに読ませたくなかったんだな…って察してしまいました(アリスが潔癖なのもあるかもですが)。なのに学生には読んでなくてガッカリするんかい!ってツッコミを入れてしまいます。
バッハ『ブランデンブルク協奏曲第五番』
アリスがイギリスのチャリングクロスにあるマーダー・ワン(推理小説専門書店)に行った時に買った。タイトルは不明なので代表作を。
直木賞候補になった↓
↓江戸川乱歩賞受賞のデビュー作↓
タイトル書かれていなかったので、推理作家協会賞受賞作を。
火村は出張でイギリスに行って、マーダー・ワンに寄ってアリスに頼まれた本を買った時に、自分用に真壁の本を買って読んだそうですが、火村はノベルス版の時には推理小説が好きな設定だったのを、文庫化する時には、推理小説にはカケラも興味が無く、子どもの時にシャーロックホームズとかをちょっと読んだ以外は、ミステリ小説はアリスの作品しか読まない人に設定変更されているので、アリスをクリスマスパーティーに呼ぶ作家はどんな奴だ。っていう気持ちから買って読んでみたんだろうなと思う(帰りの飛行機の中暇だし)。火村のミステリ小説への設定を変えてしまっても、真壁の作品を読んだことがある設定は物語の進行上変えられないなら、そういう気持ちから読んでみたっていうのが一番自然。飛行機の中が暇でも、火村なら読まなきゃいけない論文山ほどあるわけだし。
火村って、アリスが他の誰かと話していたら「何を話していたんだ?」って訊いてきたり、離れた距離にいたのに会話しっかり聞いていたり(なんで聞こえるん?っていう距離)、どうにも独占欲が強めだし。
見えないグリーン『ジョン・スラデック』
『モルグ街の殺人』『マリー・ロジェの謎』『盗まれた手紙』『大鴉』『鐘楼の悪魔』『アッシャー家の崩壊』
雑談の中に出てくる作品たち。
火村の好きなグールドの演奏するバッハ『ゴールドベルク変奏曲』
レクター博士もグールドが好き。
一番好きな曲は同じ曲でも、アリスはチェンバロのチロチロとした音色が好き(スコット・ロスの演奏が好き)。
杉井が不適切な言葉で石町たちをからかった。
ビング・クロスビー『ホワイト・クリスマス』
25日の夜のラウンジに流れていた。
エラリー・クイーン
『最後の一撃』は、クリスマスが舞台。ある意味でアリスが最も愛しているクイーン作品。風子は読まずにとっておいてある。
アリスは寝巻はパジャマ派。シャツとかトレーナーではない。こういう部分に母親が子どもの時からパジャマを買って着せてたから一人暮らしになっても、パジャマ着て寝る習慣が身についているんだなぁと思う(そういうことはちゃんとしたい母親の存在を感じるというか)。家で仕事する作家だからオンオフ切り替えの面もあるのでしょうが。
地下に続くドアが開かないので、火村が金槌で「くそっ!」の裂帛の気合とともに。
鵜飼警視のことがアリスはどうにも好きになれない。火村とアリスに冷たい野上さんのことは苦手ではあるけれど嫌いなわけではないのに、ほぼ初対面から鵜飼警視のことをほぼ第一印象で嫌ってるアリスは、シリーズをひと通り読んでから再読すると、不思議な感じがする。初めて殺人事件に遭遇してしまったことと、鵜飼警視の剃刀刑事っぷりがなんか嫌っていうのがあるとはいえ。
でも少女漫画によくある、第一印象最悪から始まる二人っぽい。なんとなく同族嫌悪な気もする。生真面目さが似ていて(アリスは自己評価低くて自分では認めないけど優秀な人材だから、刑事目指してたらキャリア組になってたタイプだろうし)。
アリスってお礼言う時、「おおきに」だったっけ?「ありがとう」だっけ?って思っていたら、殴られたアリスを心配してくれた火村に「ありがとう。大丈夫や」ってお礼言ってたから、アリスは「ありがとう」って言う大阪人だった。私も「おおきに」は使わず、「ありがとう」って言う大阪人だけど(私の両親は鹿児島出身なので、私はコテコテの大阪弁話者ではないのもある)、アリスはどっちだったっけ?ってなってた。
ちなみに「おおきに」は「多きに(大きに)有難し」(とってもありがとう、沢山ありがとう的なニュアンス)だったのが、堅すぎると「おおきに」だけで「ありがとう」の意味を持たせるようになったかららしい。
容量オーバーなので続き→


