西村寿行『血(ルジラ)の翳り』読了

 

 有栖川有栖の作家アリスシリーズに一昨年の秋冬くらいに再熱してから、一年以上ひたすら再読繰り返したり学生アリスシリーズ読んだり、他のシリーズや読み切り読んだりしてました。それらの読書感想文は書いてなかったけど滅茶苦茶久しぶりに読書感想日記を。作家アリスシリーズ第一作目の『46番目の密室』の最初に火村が講義で「西村寿行の血の翳りを読んだ者は?」って訊くシーンがあるから読んでみました。

ネタバレがっつり書いてます。

 

 

 

 

 

 下半身が脳を支配している登場人物がワンサカ出てきて、終いには父が娘二人を孕ませたり、二組の夫婦が乱交してどっちの子かは判らないけどお互い気にしないでおこうって方針だったら、子ども達は実は自分達が異母兄妹って知らないまま夫婦になって子供作って、近親相姦で産まれた子達が子孫でまた夫婦になって血が交じって…っていうのを繰り返してたら犯罪者ばっかりな家系が二組出来てっていう犯罪者は血が決めてるっていう話。

 

 妻子殺された主人公が家系を辿って行ったら警察モノから時代小説モノになって復讐モノになってた。ゴチャゴチャ。

 

 何回も何回も誰と誰が交わったせいで犯罪者家系の血を生み出したかを書いててしつこかった。時代小説部分ほとんど性描写。下半身が脳みたいな人しか出てこない。

 

 46番目の密室で火村は血の翳りを読んだことがある者は?って生徒に訊いたけど、生徒読んでても読みましたって言い辛いと思う(不倫、強姦、父に養われてる娘は生きていくために近親相姦その他諸々)。

 

 火村は大学生の時に読んだっぽい(犯罪社会学を学ぶ一環で、ジューク一族がモデルの小説だから)が、女性は嫌いだろうなこの小説(少なくとも私は嫌い)。登場する女性は強姦されるか、売春婦か生きていく為に父親に犯されて子を産まされるか、平凡な女性だったけどDV男と結婚して産んだ子が強盗強姦魔になったかで、不遇か性欲強いかのどっちかしかいない。

 

 男達は主人公と親戚の医者以外、下半身で生きてるか暗殺者かのどれか。46番目の密室で火村が講義で話題にしたから読んでみたけど、嫌いな作品。でもこれ読んだ方が46番目の密室がより面白く感じた。古本で500円くらいかそれ以下で買えるから読んでみるのも手です。文体は読みやすくサクサク読めます。火村は大学生の時に西村寿行を読んでたそうだけど、アリスには薦めなかったのは、火村はアリスにこんな性描写満載な本読ませたくなかったからだろうか?生来犯罪者説、犯罪者家系(血がそうさせる)は馬鹿馬鹿しいから読む必要なしと思ったからだろうか?前者なら火村のアリスのイメージは相当綺麗なんだろうなって思っちゃう。火村はアリスにこれを薦めなかった読ませなかったって事実を知れただけで読んで良かったです(学生には読んだことないのか?ヤレヤレ…って態度だったのに)。

 

 

ここからネタバレがっつり。

 

 

 

 

 

 

 血の翳りの主人公妻子殺されて可哀想で始まるけど、最後まで読むと妻が隠れて不倫してて殺された日の直前まで不倫相手と性行為してて、その後犯罪者家系の血を絶やすべく動いてた暗殺者に殺されてた。しかも2歳の子連れて不倫してたっていう真実を知ってしまった。子供は託卵だった可能性も。主人公妻子殺されて可哀想だったのが、最後は妻の裏切りと子供が実子じゃなかった可能性知って可哀想になった。

 

 最初は黒い血だ呪われた血だ犯罪者家系の血だってハードボイルドに始まるけど、実体は先祖のほとんどが下半身に脳が支配されてるから終いには近親相姦するに至った性欲強い一族だっただけっていうオチで、ハードボイルドモノじゃなかった(人によってはハードボイルドのくくりなんだろうけど私は違う印象受けたってこと)。

 

 この一族の最初の夫婦の妻が精神薄弱(軽度知的障害)だから、そこから始まった的に何度も書かれてるから、今の時代では実写化不可能。知的障害のせいにするところも腹立つ小説。不倫したり強姦したりしてる男達のせいだろと。

 

 作家アリスの方は潔癖そうだしこの作品読んだとしても嫌いになりそう。作家アリスシリーズを書いてる学生アリスは読んでるからこの作品のこと書いてるわけだけど、学生アリスはこの作品嫌いとかにはならなそうってイメージ。作家アリスは内面が女性的で(女性の立場に立って物事考えたり発言してるシーンがちょいちょいあるし)、学生アリスは内面も外見も男性的なイメージです(好きになった女の子が既に自分の彼女のように振る舞ったり嫉妬したりするところとか、自分に自信のあるタイプ。作家アリスは自分に自信がないタイプだから真逆だなぁと思います)。