こんにちは、Studio 0.xの橋爪徹です。
私は、オーディオライターの活動をしながら、音響エンジニアとして活動しています。音に関するお仕事で飯を食っております。(自己紹介と仕事歴紹介はこちら) 

グレード違いで音はどのくらい変わる?

ホームシアターや2.1chシステムには欠かせない存在のサブウーファー。マルチチャンネルでは0.1chと定義され、低域再生のみを受け持つアクティブスピーカーです。
このサブウーファー、意外と軽視されがちでは無いでしょうか。フロントスピーカーが大事なのはその通りですし、AVアンプにだって予算の多くを割きたい気持ちは理解できます。結果、「とりあえず鳴ってればいいか」とサブウーファーのグレードには無頓着な方もいるのではないかと思っています。かくいう私もそうでした。


サブウーファーは、当然メーカーごとにグレードの違いがあります。エントリー機種と上位機種、いったいどのくらい音が違うのでしょうか。スペックを見れば、アンプの出力や最低域の周波数がより低いところまで出ているのは分かります。見た目の特徴は同じでもサイズが大きくなり価格が上がっているケースもあって、果たして音がどれほど違うのか、設置スペースを取るだけの価値はあるのか。気になる方もいるのではないでしょうか。この記事では、DALIのサブウーファーを例にして、サブウーファーのグレード違いによる音質差をレポートしたいと思います。

 

筆者が自宅スタジオを作ったとき、ホームシアターとしても活用出来るようにしました。しかし、防音室を作った時点で予算の大半を使い果たしてしまい、サブウーファーは2万円台の安価な機種を買い求めました。ずっとそれを使っていたのですが、ご縁あってお仕事でDALIのサブウーファーを試す機会に恵まれ、今では仕事でレビューした機種を自宅に導入するに至っています。詳細は、以下のレビュー記事をお読みいただけると嬉しいです。

 

 

話をサブウーファーのグレードに戻しますと、今回ご縁あって自分が導入したSUBE-9Nの上位機種であるSUBE-12Nを試聴出来る機会をいただきました。12Nは設置スペースの都合で元々選択肢にはなかったものの、いちオーディオライターとしては気になっていました。見た目はユニットの口径と足回りのベース以外ほぼ一緒。機能面もアンプの出力や性能は同じ、ウーファーユニットの技術面も同じ、音圧レベルや再生周波数特性がちょっと違うくらいです。あまり違いの無い9Nと12N。はたして、どれだけの音質的違いを見せてくれるか、期待半分・不安半分という感じでした。


試聴は、DALIの国内正規輸入代理店であるD&Mの本社にて実施しました。システム構成は以下の通りです。

 

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フロント: OPTICON6mk2
センター: OPTICON VOKAL MK2
サラウンド: OBERON5
サブウーファー: SUBE-9N/SUBE-12N
AVアンプ:DENON AVC-X8500H
SUBE-9N
ウーファーユニット:9インチ(23cm) アルミコーン
再生周波数帯域(+/- 3 dB):37~200Hz
最大SPL:111dB
アンプ出力:170W(クラスDアンプ)
SUBE-12N
ウーファーユニット:12インチ(30cm) アルミコーン
再生周波数帯域(+/- 3 dB):28~190Hz
最大SPL:112dB
アンプ出力:170W(クラスDアンプ)

昨年7月に発売されたOPTICONのMK2もご用意いただきました。
上記の5.1chシステムで9Nと12Nを聴き比べたところ、まあ、ビックリ! 12Nは明らかに上位機種たり得る魅力的な重低音を楽しむことが出来ました。

※AVアンプ側の音場補正は無効にして、ピュアダイレクトモードで視聴しています。

 

映画やライブの感動がより上質かつ本格的に!

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洋画からはローランド・エメリッヒ監督の『ミッドウェイ
パニック映画の巨匠が手掛ける戦争モノですが、20年以上に及ぶ膨大なリサーチに基づく戦闘描写は圧巻です。当時のリアルエピーソードが随所に盛り込まれつつ、画面の派手さを追求することも忘れない監督の手腕に好感を覚えました。海外の戦争映画ですから、派手に低音は入っています。真珠湾攻撃開始からレイトン少佐が建物に入るまでを視聴しました。


9Nは、本体が共振してしまっているのが分かります。床の絨毯に直置きなので足回りの振動対策を行えばある程度緩和できるでしょうが、筐体が重低音にビビってしまっているのは聞いていて否定しようがありません。視聴前に、サブウーファー双方の聴感上の音量感がほぼ同じになるように何度もケーブルを繋ぎ替えてボリュームを調整しました。12Nは、足場(ベース)がアルミニウム製でしっかりしています。床へ伝わる振動を抑えられることはもちろん、床の振動がサブウーファーに逆流してくるのを緩和することも期待できるでしょう。筐体の剛性も9Nより高い模様で、音に濁りが少ないのも感心しました。銃撃や砲撃、爆発といった瞬間的なSEもシャープに聴かせてくれます。聴感上の音量を合わせる過程で、9Nも12Nもわざとらしい重低音にならない=さりげない位のボリュームに調整したのですが、9Nに比べると12Nの音の安定感は抜群でした。最低域の伸びもわずか数Hzの違い以上に効果的で、12Nは空気感の再現性がまるで違います。映画館で感じるまるでその場にいるようなトリップ具合は、画面の大きさだけじゃない、重低音もその役割を担っているのだと再認識しました。深く沈み込む密度のある低音は、まさに映画館のそれです。

 

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アニメーションからは、ガールズ&パンツァー最終章 第3話より、中盤の各校の対戦模様を視聴します。第3話は、知波単学園が大きな成長を遂げるも善戦の末、大洗に敗北。続いて劇場版から登場した継続高校との3回戦へとコマを進めます。ジャングルの野戦から雪原へと戦闘フィールドが大きく変化し、音響的にも見所満載の作品です。


率直に言って、9Nでは戦車の砲撃や走行音、衝突などの音が薄っぺらく感じます。12Nは、レベルが大きく瞬発力が求められる戦車戦にあっても、安定感があり映画の世界に没入できました。ローエンドはスペック以上に深く感じられ、厚みがあってリッチです。9Nは、砲撃音がガリガリというちょっと歪みっぽい音に聴こえてしまいます。大音量で鳴ったときの歪み感の少なさを加味すると、リラックスして楽しめるのは圧倒的に12Nでした。9Nは、ちょっと聴いていて疲れます。

 

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最後のソースは、ライブコンサートのBlu-ray。PlayStationで発売されたRPG『クロノクロス』の20周年を記念したバンドライブの追加公演千秋楽を収録したBlu-rayです。ゲーム音楽界の巨匠、光田康典本人がプロデュースしたファン感涙のメモリアルライブ。今でも感想がSNSでつぶやかれ、1周年や2周年でファンがハッシュタグを付けて祝ったりするほど熱狂的に愛されているライブです。私も千秋楽の現場に一般客として足を運び、後にハイレゾ音源化に合わせて光田氏にインタビューをさせていただきました。


本作の音声は、2chのハイレゾと、ドルビーデジタルの5.1chが収録されています。ドルビーデジタルとは懐かしいフォーマットです。いわゆるDVDと同じ、非可逆圧縮のマルチチャンネルサラウンド。おそらくメインの音声がPCM 96kHz/24bitで収録されているため、映像ビットレートを圧迫しないようサブ音声の5.1chはドルビーデジタルにしたのでしょう。


ドルビーデジタル5.1chは、リアスピーカーに観客席の声援や反響が割り当てられ、LFEチャンネルには低音楽器の重低音域はもちろん、ホールの反響に含まれる重低音もミックスされていると思われます。驚いたのは、12Nで5.1chを聴くとホールの中にいる生の空気感を味わえたこと。音楽としての情報は9Nでもまったく問題は無いのです。映画に比べても、9Nと12Nの落差は減りました。しかし、ライブコンサートホールのあの身体全体で感じられるような低音感は12Nでしか味わえません。まさにそのローエンドの深さこそがコンサートホールの空気感に繋がっていたのです。正直、LFEにこんなに低い周波数まで収録されていたのかと驚かされました。ともすれば、重くて息苦しい音場になりがちですが、そこは光田康典プロデュース。ミックスバランスに抜かり無しです。そんなコンサートの臨場感に欠かせない重低音は、12Nでこそ存分に体感できますし、クリアで歪み感の少ない出音のクオリティも相まってドルビーデジタルであることを忘れさせる贅沢な時間を堪能させてもらいました。

 

3枚のBlu-rayを視聴して分かったのは、サブウーファーのグレードの違いは、予想以上に大きく満足感に影響するということでした。見た目がほとんど同じで、何か特別な機能が上位機種に搭載されている訳ではありませんが、段違いに臨場感はアップしましたし、リラックスして視聴出来る上品な重低音は確かめられたと思います。ウーファーの口径の違いは言うまでもなく、筐体の剛性やベース部の強化により振動の悪影響を抑えた結果、良好な結果を得られたのだと推測できます。

おわりに ~使いこなしのTIPS~

今回の記事を執筆するにあたり、本国デンマークのWEBサイトも参照しました。機能説明はほぼ同じことが書いてあり、アンプも同じ出力&機能、ウーファーユニットも口径以外一緒、明確に違うのはアルミニウムベースとゴム脚だけで、正直呆然としました。ほとんど同じなのに音にこれほど差異が現れるというのは、如何に重低音再生において振動対策(制御)が重要であるかの証だと思います。

 

置く場所があるなら、迷わずSUBE-12Nを選ぶべし!
これが試聴しての結論です。12Nならローエンドの深みや歪みの少なさを体感できると思いますし、足場のケアをやってあげればさらに音は化けると思います。

 

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アコースティックリバイブのクオーツアンダーボード「RST-38H」(写真は9N)

電源ケーブルはACインレット対応なので、ぜひ交換して欲しいです。私は、同梱品からSAECの余っていた電源ケーブルに交換しました。またRCAケーブルも、長めの製品はなかなか見つかりませんが、業務用のMOGAMI 2534をベースにオーディオケーブル市場で特注しました。注文時に両端をRCAにします。個人的には、高価なサブウーファー専用ケーブルを買うよりは、癖の少ない音色で信頼性も高いMOGAMIをお勧めしたいです。

 

2022年2月 橋爪徹

 

試聴協力:株式会社ディーアンドエムホールディングス

どうも、Studio 0.xの橋爪徹です。
私は、オーディオライターの活動をしながら、音響エンジニアとして音声コンテンツに携わっています。(自己紹介と仕事歴紹介はこちら

Studio 0.xは、私の自宅の一室を防音室に改装したホームスタジオとなっています。2021年は、これまで使っていたオーデイオシステムをリニューアルするべく動いていました。

最近になって、機器の入れ替えがほぼ完了し、念願のプリメインアンプも導入したため、ここで一度途中経過を記録してみることにしました。

【Studio 0.x オーデイオシステム一覧】 ※印が新機材
・ソース機器(NAS):Soundgenic
・USB-DAC:NEO iDSD ※
・プリメインアンプ:L-505uXⅡ ※
・AVアンプ:AVR-X6300H
・Ultra HD Blu-rayプレーヤー:UBP-X800M2 ※
・プロジェクター:VPL-HW60
・フロントスピーカー:RUBICON 2

AVアンプとここに未記載のサブウーファーは、今後買い換えの可能性がありますが、とりあえず現状のままを考えています。

今回の目玉は、幅広いハイレゾフォーマットへの対応とフロントスピーカーの音質向上。前者は、192kHz/24bit、DSDは2.8MHzまでだった従来システムを、768kHz/32bit整数、DSD512(実質11.2MHz)、MQAと死角無くフル対応させました。後者はAVアンプで鳴らしていたフロントスピーカーをラックスマンのプリメインアンプでドライブします。

また、将来的にHDR/4K対応のプロジェクターに買い換えるに当たり、前もってUltra HD Blu-rayプレーヤーを導入することにしました。ゲーム機はPS5を所有しているので、プロジェクターを買い換えれば夢のHDR&4K生活のスタートです。そのプロジェクター54万円もするんですけどね(滝汗) ちなみにPS5のUltra HD Blu-rayの画質に納得できなかったので、専用機を購入しました。

本題に入るにあたり、基本をご説明しましょう。アンプということは、スピーカーを鳴らす機材であることは何となく分かる方もいるでしょう。では、プリとは? プリアンプとは、ザックリ言うと、入力セレクターの機能と音量調整の機能を持ったアンプのことです。入力セレクターとは、CDとかTAPEとかレコードとか、音声入力の機器をいくつも繋いで、その中から聞きたい入力を選ぶ機能のことです。テレビをお持ちの方は、HDMI1とHDMI2を切替えて、Blu-rayレコーダーとゲーム機を切替えたりしていませんか? あれの音声(音楽)版です。音量調節はその名の通り、それぞれの規定レベルで入力された音声信号をスピーカーを鳴らす増幅を行う前に、適当なボリュームに上げたり下げたりする機能です。

ということで、プリメインアンプは、プリ機能を有したパワーアンプというのが説明になります。音量調節機能を持ったスピーカーを鳴らす機材ってことですね。パワーアンプとは、スピーカーを鳴らすためだけのアンプのことです。メインアンプはパワーアンプの別名です。

あれこれ吟味した上で、プリメインアンプはラックスマンのエントリークラスに位置するL-505uXIIに決めました。このアンプについては、別途商業媒体で詳しく書かせていただく予定なので、詳細は割愛します。

こちらのプリメインアンプ、実売25万円ということで結構なお値段です。ラックスマンの中ではエントリークラスとはいえ、ハイエンドオーディオの入り口に足先を突っ込んでるのは間違いないでしょう。せっかくアンプを含め、各機器を大幅リニューアルするなら、まずは置き場所だ!ということで、オーディオラックを買うことにしました。既製品のラックでもよかったのですが、以前から気に入っているヒッコリーボードを使ったオリジナルのラックをACOUSTIC REVIVEにオーダーメードで作ってもらいました!

 

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ACOUSTIC REVIVEのヒッコリーボードを使用した、3段ラックです

ラックに置いたら3Dのジャギーが目立つ?!

ヒッコリーはドラムのスティックなどに使われる木材で、『音色に癖がなく、帯域バランスもフラット、有機的で躍動感に溢れた特性をもつ希少木材』とメーカーは謳っています。私も単体のヒッコリーボードRHB-20は愛用しており、リビングのBlu-rayレコーダーの下と、Studio 0.xの電源ボックスの下に敷いています。周波数バランスや音色への悪影響はなく、有機的な質感が得られるのが特徴で、音に生気が宿るというか、録音音楽なのに瑞々しさが増したような音に変化します。このラックの支柱は黒檀です。黒檀は非常に硬くて重い木で家具や仏壇、楽器にも使われます。

写真では真ん中の段が空いてますが、いろいろ試行錯誤している最中です。今のところは、PS5を空いている段に入れる予定です。ラックの効果について、PS5の置き場所で検証してみました。防音スタジオの床に直接縦置きする方法と、3段ラックに横置きする方法で、画質と音質への影響を比較しました。スクリーンは、シアターハウス製80インチのスクリーンです。

 

【床置き】

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まず、防音スタジオの床は、一般的な日本のマンションの床よりも堅牢で質量があります。防音とルームアコースティック向上のためです。軽くてヤワな床は、それ自体が共振し音を濁らせてしまうからです。設置した場所は、スピーカースタンドの隣で、オーディオ機器が置いてあるエリア。このエリアは、リスニングエリアと床の縁切りを行っています(内部で床の構造自体が分かれている)。オーディオ機器エリアの振動がリスニングエリアの床に伝搬しないようにしています。結果として、スピーカーなどの振動が片側に集中して溜ってしまうという欠点はあります。

まず床にポン置きした時の映像と音は、特別違和感はありません。何かしら目に見えて悪く感じると思ったのですが、意外とそうでもないです。これしか知らなければ何の不満もないかなという程度。

 

【ヒッコリー製のラック】

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縦置きスタンドを取り外し、横置きの状態に変形させて取り付けます。PS5は縦置きも横置きもスタンド必須。設置面は常にスタンドの丸い設置面のみとなります。オーディオマニアとしては、安定したレッグ部は重要ポイント。足回りがデザイン優先なのは残念ではあります。とはいえ、設置安定性を考えるとスタンドを使うしかありません。

ラックに収納してPS4「黎の軌跡」のニューゲーム冒頭の同じシーンを見てみます。あれ?? ゲームのグラフィック設定変えた??、ってくらい目に見えて違います。具体的には、「遠景のオブジェクトのジャギーが目立つ」。画質が悪くなったように一瞬思いますが、よく見ると、あらゆるオブジェクトがクッキリと映るようになっています。背景と人物の奥行きもより如実に伝わってきます。若干ですが、衣装の表面の質感までグッと本物っぽくなりました。シャープネスが大きく改善したことで、今までぼやけていた輪郭が解像度を上げて、結果としてジャギーが目に見えて分かるようになったという訳です。これにはいろんな意味で驚きです。クッキリ感と奥行きの改善。3D表現が当たり前の昨今のゲームでは共に嬉しい変化でありますね。逆にゲームのグラフィックの粗が見えてしまって困ることも。おそらく、一般家庭の絨毯や畳に直置きしたのと比べるともっと違うと思います。

そして、音質は、これまでより音像がクッキリとディテールが見えるようになりました。台詞は彫りが深くなり、スタジオでしっかり録って整音したゲーム音声に仕上げている、その完成度がジワジワ伝わってきます。なんだか音に高級感が出ます。帯域バランスは変なピークも無く良好です。音声が改善されたのと同様に、BGMやSEも粒立ちが良くなって、一つ一つのトラックが埋もれずに聞こえてくるようになりました。街で鳴っているラジオなどの環境音声にしても、耳にスーッと入ってきて、集中しやすい音に変わりましたね。何となく鳴っている感じがしません。

MOGAMI大健闘 真に迫るオーディオグレードの音とは

次にこだわりたいのは、LINEケーブルです。NEO iDSDはXLRのバランス出力を装備しています。L-505uXIIもバランス入力を1系統備えているので、XLRケーブルを新調しました。バランス接続は、長距離伝送しないなら原理上、あまり意味が無いともいえますが、そもそものソース機器(NEO iDSD)側の回路構成の優位点、そして受け手のアンプ側の設計次第でRCAより音は良くなることもあります。NEO iDSDは内部回路が完全にバランス設計となっているので、LINE出力はXLRの使用を推奨しています。使わない手はありません。いちおうRCAとXLRで比較しましたが、XLRの音が良かったです。

XLRケーブルは、ACOUSTIC REVIVEのLINE-1.0X-TripleC-FMをベースにした特注品。プラグ部を上位品で使われているRBC-1M、RBC-1Fに変更してもらいました。このプラグは、音質劣化が避けられないハンダ留めを採用せず、ネジ留め式にしているバランスプラグとしては初の製品だそうです。

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導体は、オーディオ専用導体のPC-TripleCの単線。単線のため少し固いですが、撚り線では避けられない迷走電流を防止することで、歪みやノイズ、付帯音の発生を抑えるとのこと。絶縁材は、伝送スピードに優れるテフロン(フッ素)。天然シルク緩衝材で帯電防止。銅編組シールド。完全バランス伝送を実現する3芯シールド構造。ケーブル外周はカーボンを配合したCSFチューブ。ノイズ除去のため、日立金属のファインメットビーズをプラグ部分に使用しています。

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XLRケーブルは音の癖が少ないMOGAMIの2534が2本ありますので、これと比較してみました。MOGAMIのケーブル長は5mあるのでそこはお目こぼし下さい。

楽曲は、私が総合Pを担当するBeagle Kickの2ndアルバムMIRACLEからAnyway。

まずMOGAMI。さすが業務用ケーブルの中でも屈指のフラットバランスと賞賛されるケーブル。帯域バランスは非の付け所がありません。私がスタジオで聞いていたバランスそのものです。若干ですが、音像の輪郭がぼやけるというか、音の周りにモヤが掛かったようになっています。「クッキリ感」が足りないなと思いました。

新しいケーブルに交換しますと、帯域バランスはそのまま。雑味や付帯音は、一切ありません。さすが単線導体&テフロン絶縁です。ここまではMOGAMIとほぼ互角。しかし、気になっていた音像の周りのモヤが一掃されました。ハイレゾ192kHz制作なので、音はいい意味で太く実在感がありますが、その楽器の音だけが目の前に浮かび上がっている感覚です。とにかくピュアです。音場が少し整理されて、前後感などミックスの意図がさらに分かりやすくなっています。それと、これはホントに絶妙なさじ加減なのですが、「エネルギーが全帯域に渡って増した」。このエネルギー感はモリモリにすると、イコライザーを派手に掛けたみたいで違和感しかないのですが、アコリバのケーブルは、息を吹き返すというか、音に生命が宿るような気がします。コーラスも口元の感じや息遣いまでリアルに聞こえてきます。音楽が素直に楽しいと思えます。

足回りのケアを忘れるなかれ 説得力に差が出る

最後はインシュレーターです。駆動系があるBlu-rayプレーヤーや、内部のトランスが振動するプリメインアンプは、足回りのケアもした方がいいと思います。ACOUSTIC REVIVEの新製品RKI-5005は一見して樹脂製のインシュレーターですが、いくつもユニークな特徴があります。

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表面にある幾何学模様の溝は、制振特性を高めるための工夫だそうです。これを上にして使用するのが鉄則だとか。手触りはシリコンっぽいですが、まさに制振特性に優れたシリコン系新素材を使用したとのこと。『貴陽石やトルマリンなどの天然鉱石のパウダーを含浸させ強力なマイナスイオンを発生』ということで、マイナスイオンによる帯電除去効果で音質にもプラスの作用が期待できそうです。なんでも、貴陽石やトルマリンは圧力によってマイナスイオンの放出効果が高まるらしく、インシュレーターとして使用すると機器の重量で圧力が掛かり、よりマイナスイオンがぶわーっ!ってことらしいです。マジかよ!?

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↑ 写真的にこの絵面が一番分かり易い。実際に比較で試したのは、Blu-rayプレーヤーとプリメインアンプ

Blu-rayプレーヤーに使った場合の映像と音質の変化をチェックしました。

ソースは、「CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda & Millennial Fair FINAL at NAKANO SUNPLAZA 2020」。音声フォーマットはリニアPCM 96kHz/24bit。

何故ライブのBlu-rayを使うのか? それは、あらゆるソースの中でもっとも画質の差が分かりやすいからです。これは個人的な経験なので、科学的に説明できないのですが、特徴として暗い場所で動きが多く色合いも豊か、そして明暗の差も大きい、映像の奥行きは狭かったり広かったり変化があります。それらを高い再現度で正確に表現できるか。まさにプレーヤーやモニターの質をシビアに知らせてくれるのです。

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インシュレーター無しの場合、なんだかボンヤリとして寝ぼけたような画像を見せられます。被写界深度も曖昧で、人物や楽器の輪郭が定まっていません。音は、そこそこのクオリティで鳴ってます。若干音数の多さに負けてる気もします。ゴチャっとした、ゴミゴミした感じ。

プレーヤーの下にインシュレーターを敷いてみると、途端に映像に締まりが生まれました。シャキッとフォーカスの合った人物や楽器、照明のキワの輪郭に至るまで、まるで写真を見ているかのような美しさ! クロスフェードで画面が移り変わるところも、それぞれの映像がちゃんと脳に入ってきます。前はいつの間にか変わっててムードも何もなかったのに。気持ち、明暗の差が深くなった気がします。黒い部分がより沈み込むような。

そして、音はトランジェントが大幅に改善しました。打楽器の音は立ち上がりも立ち下がりも、とってもシャープ。結果的に時間解像度が改善しているので、奥行きや定位も鮮明になりました。楽器の演奏がより生き生きとしています。音の芯がしっかりして、ベースは腰が入った気持ちいい音に改善しました。楽器同士の分離も良好で、ゴミゴミ感が激減したため、音量をもっと上げたくなります。

次にプリメインアンプに使った場合の音質の変化をチェックしました。

楽曲は、私が総合Pを担当するBeagle Kickの2ndアルバムMIRACLEからAnyway。

これが一番変わりました。驚きです。これまでもラックスマンのアンプは素晴らしい音を奏でてくれていました。それが、さらに激変です。まずは空気録音の動画をご覧下さい。(マイクはPCMレコーダー内蔵の無指向性で録っています。ワンワン響いていますが、実際はもっとシャープに聞こえます。あくまで相対的に比べて見て下さい)

どうしょうか。私としては、帯域バランス的に副作用はないと思います。シリコンだから「グニョ」っとしたり「プヨン」としたり音が変になってしまわないか一抹の不安はありましたが、まったく杞憂です。むしろ、トランジェントは著しく改善しました。スパーンと立ち上がったと思えば、ストーンと素早く収束します。まるで気っ風がよく迷いがないみたい。美しいです。ラックスマンの余裕のある駆動力と確かな制動力でもって、スピーカーを音源の通りに正確にドライブしている。そんな実力の高さがさらに分かりやすくなった印象です。楽器の音には、一瞬で終わる音量の変化ってたくさんあって、そのグラデーションは自分が思っていたより遙かに緻密で目まぐるしく変化していたんだなと。これまでのAVアンプで聴いていた音はなんて平面だったんだろうって。ダイナミックレンジなんて、偉そうな言葉使っていたのが恥ずかしくなるくらい音が変わりました。そして、極めつけは音にオーガニックな質感がプラスされたことです。効果のほどはさりげなく=小さじいっぱいって感じですが、血が通ったような、温度感のある聞いてて気持ちのいい音に変わっています。これがマイナスイオンの効果かも。アンプを購入して1ヶ月弱。初めて本当の音を聴いた気がしました。やはり足回りのケアはやらないといけませんね。改めて痛感です。

ということで、オーディオシステムの入れ替えにあたり、新たに導入したアクセサリーをレビューしていきました。オーディオアクセサリーは、機材の性能を引き出したり、また自分の好みの方向に近づけるためのアイテムです。僕は、音響エンジニアをやっていることもあって、「何も引かない、加えない」をコンセプトにするACOUSTIC REVIVEに信頼を寄せています。あらゆる製品に同じ信念が貫かれているので、私の音楽ユニットBeagle Kickでも積極的に音楽制作に導入しています。

各製品は、貸出しサービスをやっているので、興味のある方は利用してみて下さい。アクセサリーは、効果のほどがどれほど出るか心配だと思います。実際に使って効果を確認してから検討できるのは消費者として嬉しいポイントかと。

 

ちなみにオーダーメードのラックですが、無料会員登録して直接相談するのがよいと思います。広く募集している正式なサービスというわけではないので、ある程度信頼関係を作ってからの方がよさそうです。

どうも、Studio 0.xの橋爪徹です。


普段は、オーディオライターの活動をしながら、音響エンジニアとして音声コンテンツに携わっています。

我が家の防音スタジオ、Studio 0.xにマイクプリアンプがやってきました。
ホームスタジオといえば、最近はマイクプリアンプを持たない方も多いかもしれません。

 

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置き場所やコストなどいくつかその背景は考えられますが、一番大きな要因は、オーディオインターフェースのマイクアンプが高品質になっていること。数万円でありながら十分な性能のマイクプリアンプを搭載している製品もあって、下手に安物のマイクプリを組み合わせるくらいなら、内蔵マイクプリの方がいいかもしれません。

今回、私がマイクプリアンプを導入したのは、SONYのC-100を使ってみて、このマイクの性能をもっと引き出したいと思ったからです。

 

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C-100は、克明なディテール表現力、歪み感の少ない音像、50kHzまでフラットに録れる広帯域と、まさにハイレゾ時代にふさわしいマイクです。マイク前で鳴っている音を余すことなく捉える、そんな写実的なマイクだと思います。
C-100の音に聞き惚れていると、今自分が使っているオーディオインターフェースUS-20×20より上のグレードを実現できるのではないか、そんな欲が出てきました。

ということで、買ってしまいました!

Focusriteのマイクプリ「ISA Two」

2chのマイクプリアンプを搭載したラック収納型 1Uタイプの製品です。

Focusriteといえば、音声録音スタジオではGRACE designと並んで採用例の多いマイクプリ、……かもしれません。(筆者の個人的実感)
GRACE designと悩みましたが、2ch録音もあり得ること、そして予算の都合もあってFocusriteに決めました。
ISA Twoの詳細はこちらこちらが詳しいです。

C-100で録ってみたファーストインプレッションは、真に迫るナチュラルサウンドと、繊細なディテール表現力が持ち味の生真面目なマイクプリです。
マイクプリを導入する人は、その機材ならではの個性、つまりサウンドの癖(特徴)を求める方も多いでしょう。私は、ボーカルは録らず、台詞やナレーション、トーク(語り)なので、マイクプリに個性は求めていません。よって、どこまでも原音に忠実であることを重視します。そんな私にとってISA Twoは理想にほぼマッチしました。US-20×20は、日本メーカーらしく自然な周波数バランスのマイクプリとなっているので、それほど違和感なく移行できそうです。(実はここが一番心配でした。個性的だとまずいので)

 

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ラックに収納されたUS-20×20 8chのマイクプリを搭載

 

特に面白いなと思ったのは、インピーダンス切替え機能。ベースとなったISA 110のインピーダンス1400Ωに加え、600Ω、2400Ω、6800Ω、合計4種類のインピーダンスをマイクに合わせて設定することができます。US-20×20の入力インピーダンスは2400Ωですから、それと比べると、低い方に2段階・高い方に1段階可変できることになります。
商品説明には、マイクとプリアンプのマッチングのためとありますが、リボンマイクとか特殊なマイクでなければ、どれを使っても構わないと思います。音の好みで選びましょう。

 

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コンプなどのアウトボードに送るセンドとリターンの端子があります

 

実際のサウンドは、(C-100の場合)低い設定は中低域の量感が増して高域は大人しくなります。ISA 110=1400Ωでは中庸なサウンド、さらに高い設定に変えていくとレベルがやや上がり高域のブライト感が増していきました。個人的にはISA 110で普段は使い、高域に癖や特徴のある声の方はLow、暗めだったり落ち着いた声の方はMedやHighも視野にサウンドメイクしていこうかなと思います。ちなみに私の声はISA 110がベストマッチでした。Low設定に本体のローカット(HPF)をいい具合に組み合わせると、これはこれでナチュラルサウンドになるかもです。問題は、ローカット(HPF)の周波数ダイヤルの目盛りが意味不明なこと……(読めない)

 

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左から数えて3つ目と6つ目のダイヤルがHPFの周波数

ACOUSTIC REVIVEの特注ケーブルを使ってみた

ISA Twoの電源ケーブルはプロ向けとあってACインレットタイプです。オーディオグレードの電源ケーブルが使えます。
US-20×20にLINEレベルで入力するには「XLR(メス)⇒TRS」のケーブルが2本必要です。こちらはMOGAMIのカスタム品でもいいですが、よりハイグレードな製品も試してみたくなりました。
筆者のスタジオにも多くの製品を導入しているオーディオブランドACOUSTIC REVIVE。こちらのケーブルを選ぶことにしました。「何も引かない、加えない」のコンセントはレコーディングユースにもぴったりです。
まず、電源ケーブルは切売りケーブルのミドルランク「POWER STANDARD-TripleC8800」に、自宅にあったプラグとインレットの残り物を使います。プラグをACOUSTIC REVIVEに送付し、組み立ててもらいました。

 

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LINEケーブルは、ベースをミドルランクのケーブル「LINE-1.0X TripleC-FM-Sマイクケーブル(3芯シールド構造)」として、プラグ/ジャックはハイエンドクラスの「RBC-1F」と「RPJ-1ST」にしました。ずっと使うケーブルなので奮発しました。

 

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マイクプリアンプ側のXLR(メス)

 

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オーディオインターフェース側のTRS


オーディオファンならともかく、DTM周りでケーブルに投資する方は、それほど多く無いかもしれません。音色を変化させるためにケーブルを複数持っている方はいても、忠実に音声信号を伝送したいからケーブルにこだわるという方はレアケースかもしれませんね。考えられる理由は、業務用のケーブルはもともと癖が少なく、まともな音がするから。普通にMOGAMIとか選んでいれば、失敗は少ないのです。(MOGAMIは、とても素直でナチュラルなバランスなので僕もお気に入りです)
しかし、私はオーディオライターでもあり、自身の音楽ユニットBeagle KickではACOUSTIC REVIVEのメリットを身を持って感じているからこそ、一般業務用のさらに上を選びたいと思っています。
機材の性能を最大限まで引き出す、ケーブルでサウンドに色を付けない、そんな思想があらゆる製品に貫かれているACOUSTIC REVIVEはその意味でも信頼できるブランドです。

 

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単線なので、取り回しは気をつけます。少し長めに注文(70cm)

単線の固さを生かして空中浮遊させることで、音質にもプラスの効果

【ケーブルの特徴】

電源ケーブルの導体は、世界初のオーディオ専用導体PC-Triple C(3.5スケア)。伝送スピードに優れるポリエチレン絶縁材を採用(外装シースにも)。緩衝材には天然綿。外来ノイズ遮断に有効な銅箔シールド。メッシュチューブは、カーボン粒子含浸のカーボンシールドメッシュチューブ。
LINEケーブルも導体はPC-Triple C。こちらは、歪みや付帯音の少ない単線胴体を使用。絶縁材は、最高の伝送スピードを誇るフッ素樹脂。ノイズ除去には、ファインメットビーズを採用。
XLRプラグは、航空グレードアルミ合金削り出しボディがルックスの満足感を高め、優れた制振効果も実現。ケーブル接合部はネジ留め式になっており、はんだよりも音質の劣化が少ないとのこと。TRSジャックは、世界初の非磁性体ジャックを採用。銀+ロジウムメッキ、-196℃超低温処理、制振対策など。

【音質レビュー】

・テスト環境
DAW:ProTools 2020.9 (96kHz/32bit-float)
マイク:SONY C-100
マイクケーブル:ACOUSTIC REVIVE  XLR-1.0TripleC-FM(長さ特注)
オーディオインターフェース:TASCAM US-20×20
マイクプリアンプ:Focusrite ISA Two
USBケーブル:ACOUSTIC REVIVE  USB-1.0PL-TripleC(長さ特注)
OTGケーブル:iFi Audio オーディオファイルOTG(Type-C)
USBノイズ除去:iFi Audio iPurifier3

・電源ケーブル
付属品だと、声の音像の周りに余計なお肉が付いてる感じがします。中~高域に掛けて少し雑味があって、クリアさが今ひとつです。音像の奥行きも狭く、音場感も平坦です。
ACOUSTIC REVIVEの電源ケーブルに交換すると、音が出た瞬間に空気感がまったく違います。高域の伸びは豊かになり、音声だと分かりにくいですが、倍音再現性も上がっているでしょう。声のディテールはクッキリと写実的なものに変化しました。雑味もすっかり解消されています。付属のケーブルも単体で聴くと悪くはないのですが、機材の本来の音質を引き出せていないと思います。特にハイレゾで録ると、その違いは大きく現れるでしょう。

 

・LINEケーブル
比較対象のケーブルを保有してないため、絶対評価しました。

US-20×20単体で録ったときとISA Two経由で録ったときと、音の純度はほぼ同格。これは素直にすごいと思いました。
オーディオインターフェース直で録ると、音の純度というか鮮度面は上回ることもあります。外部のマイクプリを使った場合、音にマイクプリ独自の個性は付加できるけど、純度は下がってしまうパターンです。
それがまったく感じられません。ケーブルを介しているとは思えないほど、歪みや雑味が感じられず、音色的な癖もまったく乗っていません。スタジオグレードのマイクアンプが増幅した信号を、限りなくそのままの状態でUS-20×20に送り、ADしたというイメージです。これを科学的に証明することはできませんが、言ってみれば、US-20×20の中にFocusriteのマイクプリが入っているかのような、圧倒的な高純度を実現している気がします。

 

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ということで、いかがでしたか?
マイクプリアンプもケーブル次第で化けますね。
一般的な業務用のケーブルや付属のケーブルもいいですが、より機材の性能を引き出すならオーディオグレードを視野に入れるのも選択肢だと思います。


ACOUSTIC REVIVEのケーブルを特注するためには、まず無料会員登録をして、コンタクトフォームから相談してみることをお勧めします。
全製品無料貸し出し(送料別)もやっているので、アクセサリーの類いは買う前に試すとよいかと。

 

では、また次の記事で!