とにかく早く進みたい僕とは対照的にニコラスの方はのんびり進みたい派で、それに彼は、初日から靴擦れをおこしていたのでしばしば痛がり、少し歩くとすぐ休憩しようと言った。
彼のは足裏の靴擦れで、歩く度に当たって痛いらしかった。

靴擦れで苦しんでいた人にはその後何人も出会った。やっぱり痛くてかなわないと言って、ある人は靴を買い変え、またある人は草履に変えたりしていた。
僕は靴が貢献してくれたおかげで、足のトラブルからはほとんど免れた。
お世辞無しで本当に靴の力が偉大だった。

遍路を始めるにあたって靴選びはかなり時間をかけた。何足も試した。なにしろ1周1300とも1400キロとも言われているその距離を歩きぬくには、靴が一番重要だと考えていたからだ。更に雨が降った時にはどうするか、荷物を最小限にとどめるには2足は持って行けない、ならば防水性を選ぶか、どうか。

旅の用意をしていたある日、偶然、靴の中敷を作ってくれる店を見つけた。自分仕様、オーダーメイドの中敷だ。
足方を取り、採寸する事で、足のクセを見極めてくれる。
中敷といえどフルオーダーすると値段ははる。でもスーツ同様セミオーダーみたいなものもあるので、予算を押さえたい時にはそれがおすすめだ。僕はそれにした。
しかしこれは、作って、大大大正解だった。
良さは履けばすぐにわかる。
足と一体になった靴というのはこれ程までに気持ちが良いものかと感動し、そして、素足よりも靴を履いている方が足も膝も腰も楽になる。
これは、本当だ。
遍路後半、くたくたになった僕の足を靴に毎回助けてもらった。素足だと歩くのがキツクて引き摺るようだったのに、ひとまず靴を履いてしまえば毎日何十キロも歩けた。
毎日歩き過ぎて後半靴擦れが出来たが、それも側面だけだったので、歩くには支障なかった。

雨対策としては、防水というより、むしろ濡れてもすぐ乾く、という方向で考えることにして、結果僕が買ったのはトライアスロン用の靴で、軽くて通気性抜群、濡れてもすぐ乾くやつだった。
これも当たった。


藤井寺に着いた。
バスで周っている団体のお遍路さんが沢山いる中、僕らは少し休憩し、そしてその後、団体さんを掻き分けて、【遍路ころがし】の異名を持つ大難所、12番焼山寺へ向けて、境内から山道へ入った。



第11番札所 藤井寺【ふじいでら】(金剛山一乗院藤井寺)
・徳島県吉野川市鴨島町飯尾1525
・本尊--薬師如来
・本尊真言--おんころころせんだりまとうぎそわか