約八十年ほど前に、書かれた作品。
『富嶽百景』
太宰治の書く、その御坂峠の、天下茶屋。
長く、遠い夢だった。その走馬燈がフラッシュバックし、回ってる。
何? トランプ? ・・アメリカ大統領選が、・・どうした?
ここは河口湖畔の、朝の宿。
寝床の相方が、うざい! (笑)
朝食は二階の大広間で、七時半から、
トヨタレンタカー・富士河口湖店の開業が、九時から。
あああぁ!
また、開放された、スッポンポン。
相方を放置して、あの七階の展望風呂にでも行くか! (笑)
朝食の二階、大広間、すぐ目の前に河口湖があって、絶景。
そして美味しかった。
早々に売店で土産物を買う相方を、また放置して、
外に出て、一人散歩に出た。
等間隔に植えられた並木の、紅葉が美しく映える。
旅館のすぐ前に一段低い駐車場。そして湖面の、船着き場のようなところに下りたら、
船津浜、とある。
船津?
はてな? 船津? どこかで、聞き覚えのある地名。
そういえば・・・、
十月末になると、山の紅葉も黒ずみ・・、遊覧の客もなく・・、おかみさんが、六つになる男の子を連れて、峠のふもとの船津、吉田に買い物に出かけていって・・、
と、太宰の書く『富嶽百景』に書く、その、船津か?
いつか花嫁姿のお客が、紋付き着けた爺さんふたりに付き添われて、自動車に乗ってやって来てーーー峠の向こう側から、反対の船津か、吉田のまちへ嫁入りするのであろうが・・、
と、そして、また、 『富嶽百景』の中に出てくる、その、船津なのか?
そう思った時、ある感銘が過ぎった。
名前と、写真だけで、会ったこともなく、その実像も知らないし、時代もちがう。
その太宰治と、心で通じ合える。
時空を越え、時を経て心酔し、読むってことは、
そういうことなのか?
もう一つ、気になっていたことを、思い出した。
すっかり記憶の果てに、消失していたはずなのに、・・・・。
突然蘇ってきた、
『富士五湖めぐり定期観光バス』
第2富士1号 昭和47年1月2日 於河口湖、とある、
たしかに自分も写っている、古い団体記念写真。
遊覧船の停まってる、その船着き場。
かつて太宰治の『富嶽百景』に心酔した、青春の一人旅。
はてな?
・・船津・・?
そうとも知らず、時空を経て、
自分は今、宿を出でて、
もしかして、
今またここに、その同じ現場に、立っているのではないか、と・・。
戦慄が走った。
時空を越えて、生きているということは、
いのちの、呼び戻しというか?
人生って、奴は・・。
そして、読むってことは、
こういうことなのか?