ただ憧れを | 旅中毒

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装備の他にはただ、胸が痛むほどの憧れだけがあればいい。





ロバート・A・ハインラインの 「月を売った男」 「鎮魂歌」 を読んだことはありますか?

未読の方は、ぜひご一読を。


ネタばれを含みますので、未読の方は以下を読まない方がいいかも。

……ネタばれするとか何とか、そんなレベルの作品じゃないとも思うけどね。


この作品の感動を伝えたくて友人に粗筋を語ったら、「……ふうん、いい話だね」 …って。

そうだよね、粗筋じゃわかんないのよ。

あの凄まじさが。



私だって人並みに宇宙旅行に憧れています。

幼稚園の年長さんの時に将来なりたい職業を問われて、宇宙飛行士と答えたことも記録に残っています。

(もっとも年少さんの時は「バレリーナ」と答えていますので、派手なら何でもいいと言う性格が幼少の頃から顕著だっただけかもしれませんが)


でも本当はそんなもん、憧れとも言えないのです。

行かせてくれるなら行きたいけど~?てなもんですから。


あ、この美術館ただで入れるらしいから見ておく?とか、これ試食できるって~、食べてみようよ~とか、そんなのと同程度のものが、憧れと呼ばれていいはずがない。


体がちぎれ飛びそうなほどに激しく求め、焼けつくような思いに飲みこまれ、焦がれ抜く。

真の憧れとは、そういうもののことなのでしょう。


  ただ憧れを知るものだけが
  私の苦しみをわかってくれる
  すべての歓びから離れてただひとり
  私は空のかなたを見つめている
   (後略)


いや、ゲーテのこの詩はは恋歌なんでしょうけど!

でも私はこの「鎮魂歌」 を読んで初めてこの詩の意味を想像することができたのよ!




「鎮魂歌」 の主人公が一生を通して憧れ続けてきた宇宙の景色をついに見た時の描写の圧倒的なパワーこそが、私が友人に伝えたかったものでした。


その場面では、単に、ロケットから見える地球や月や星の様子が淡々と書かれているだけです。

歓声も拍手もなく主人公は静かにそれに見入っている。

爆発的な喜びを読者に叩きつけながら。


「そこにあった、あれほど何度も想像してきたもののすべてが。」


何十年もの間写真やビデオで見続けて、もう見る必要がないくらいよく知っている光景を、彼は今、自分の目で直に見ている。

何度読んでも涙があふれます。

主人公の感動と興奮に引きずり込まれるのです。




旅好きさんの中には、いわゆる観光名所が嫌いな人もいます。

彼らが口を揃えて言う言葉は、


「ガイドブックに載っていることを確認しに行って、何の意味があるの?」


何の意味があるのか知りたければ、この 「鎮魂歌」 を読めばいい。

それでもわからないと言うのなら、それは単に貴方が「憧れを知るもの」 ではないということだ。