北朝鮮の金正日総書記が死亡した。
三代世襲に向けて金正恩を後継者に据えてまだ間もないこの時期について、誰もが思ったより早過ぎると感じたはずだ。
瀬戸際外交を独裁で主導してきたとされる金正日だが、果たしてそうだろうか?
金日成は確かに国家創設の父であったが、彼による社会主義国家としての形が確立されて以来、党を中心とした特権階級が形成され、それを保持 したい一部の平壌の住人たちが本当の支配者ではなかったのか?
カリスマとしての1994年に金日成が死んだあと、北朝鮮の体制を維持するにあたってその息子である金正日は祭り上げられたのである。それ は金日成の意思であったかの知れないし、国民もそれでよしと思っていたかも知れない。金正日は20年かけて後継者としての実績(?)を積み上げて権力を継承したが、それは金日成があまりにも偉大過ぎたし、当時の国民の支持を得てい たからだろう。
同じ社会主義国家の大国ソ連が1991年に崩壊した。吹けば飛ぶような弱小国家の体制が依って立つイデオロギーが否定されたのである。北朝鮮の政権中枢はどうしたらいいか分からなくなったのだろう。
と、いうかどうしようもなかったのである。とりあえず体制を維持するには金正日が世襲する以外になかったし、その準備もできていた。
本来なら長男の金正男氏が後継者として準備するはずだったのに、2001年に身分を偽って日本に入国して送還されるという大失態を演じてしまったために、彼の後継者の目はなくなった。西側のテレビの取材に答える様子を見ているとマルチリンガルのようだし、頭も良さそうだ。あの事件がなくても今の体制の北朝鮮の指導者になりたくなかったので放蕩息子を演じたのかもしれない。
かくして金正日の後継者は金正恩になってしまったのだが、彼はあまりにも若すぎたので、党や軍で要職に就くことができなかった。それでも後継者として世界にお披露目してしまったので、周りの者たちは彼を担いで権力闘争にいそしんだ結果、とりあえず指導部が固まったから今回の発表に至ったのではないか。あるいは金正日には何人か影武者がいたらしいが、いよいよそのストックも切れてしまったのかもしれない。
傀儡の頭は体裁がつけば誰でもよいのだ。
軍や党の中枢にあり、ぜいたくができれば近い未来に国家が崩壊するかもしれないとわかっていても今の既得権益を守ることに視野狭窄している、あるいは敢えて見ないようにしているだけのこと。しかも彼らが悪質なのは、国家が傾いても独裁者の指導が悪かったことにして自分では責任を取らないのだ。
かわいそうなのは末端の国民だ。食料や資源は乏しく、移動の自由もない。貧乏だから近隣同士で監視し合い、密告の報酬目当てで他人を堕とし入れる体制ができあがってしまっているから、いかに不満があろうとも、人民が蜂起するパターンにはなり得ない。
これといった基幹産業がなく、農業も駄目となれば、軍事しかない。弾道ミサイルや核兵器を売ることや偽札とか麻薬などの非合法な形でしか外貨を得られずではジリ貧は明白。仕事がないから人民は軍人として養ってきたが、ついにカネと食料がなくなって、軍もボロボロ。
若くて経験もないからこそ金正恩はおかざりだけの領導者となり、実際は党か軍の連中が今まで通り彼らの私服を肥やすことのみに政治が行われるだろう。恰好のの傀儡の誕生だ。金正日は20年かけて人事の優遇などで部下を掌握できたから何とか暗殺されずに済んだが、金正恩の場合は後ろ盾になるものが血統以外にないので、下手に正義感をもって改革などを断行しようとするならば、彼ら既得権益者たちにあっという間に抹殺されるだろう。
滅びゆくローマ帝国でどれだけの皇帝が宦官や周りの者たちに殺されたかを見れば明らかだ。
民衆とはわがままなのである。
さて、このあと北朝鮮はどうなるのか?私の考えでは、
1.金正日時代の瀬戸際外交を継続しながらゆるやかに崩壊する
2.やけくそになって南進するも、国連軍によって殲滅させられ、国連の管理下に置かれる
3.大胆な革命(民主主義国家になる)
以上の3つのシナリオが考えられる。
どうなることやら
それにしても金正日死去に対する北朝鮮国民の反応のの乏しいこと。
金日成の銅像に手向ける花が閑散としている。
派手に大声でワアワア泣いているように見えるが、よく見ると誰一人として涙を流していない。
父ほど国民には愛されていなかったのだろう。
韓国には「泣き屋」という涙を流して大泣きする職業の人がいて、事件で誰か死ぬとよくテレビに出ているが、もうちょっと演技力のある者を使えばよかったのに。