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パラレル

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荏原 畠山美術館で開催中の「まだまだ見せます、新生 荏原 畠山美術館ー中国鑑賞陶器、青銅器から新収集作品まで」展でこれはと思う作品、《秋草御所車蒔絵棗》(江戸時代 17世紀 荏原 畠山美術館)の主観レビューをお届けします。


一見したところ、本作は片輪車のように思えます。

そのため、《片輪車蒔絵螺鈿手箱》のような作風を想像したのです。

しかし、水は無く、代わりに秋草が、また、無いはずの御簾が描かれています。

本作は片輪車ではなく、御所車を描いていたのです。

 

御所車とは、平安時代に貴族達が乗っていた華やかな牛車のことで、『源氏物語』や『伊勢物語』など王朝文学によく登場します。

作品には車輪と御簾しか御所車を表すものは描かれておらず、秋の和歌に好んで詠まれる萩や芒が描かれます。

 

こうしたことから、本作から様々なストーリーを想像することができます。

例えば、御簾がめくれ上がっているので、中から秋の風情を楽しんでいるように感じられます。

 

作者は、正解の無い問いを本作に込めたのではないでしょうか。

いつまでも心地よい思考に浸っていることができる作品と言えるでしょう。

荏原 畠山美術館で開催中の「まだまだ見せます、新生 荏原 畠山美術館ー中国鑑賞陶器、青銅器から新収集作品まで」展へ行って来ました。


2024年10月から3期に分けて開催された開館記念展に続く本展。

同館が誇る国宝・重要文化財をはじめとする中国の鑑賞陶器、中国古代の超絶技巧が発揮された青銅器から新収集作品まで、様々な角度から収蔵品の魅力を伝える展覧会となっています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

Ⅰ. 涼を味わうー東洋のやきものと書画

Ⅱ. 器の魅力ー形・装飾・技法

Ⅲ. 縁に引き寄せられてー新収集作品とその歴史から社会に開く美術

 

夏の暑い時期に行う茶事には、涼しさを演出するための様々な工夫がなされてきました。

1章では、東洋のやきものと書画を夏ならではの涼やかな趣向で楽しむことができます。

窓側に展示されている《高取透鉢》(江戸時代 17世紀 荏原 畠山美術館)は、白い藁灰釉をほぼ全体にかけています。

胴まわりに菱文や大小の丸文、花文などを自由自在に透かし文としており、見た目にも涼しそうです。

 

また、同館が誇る重要文化財、《染付龍濤文天球瓶(青花)》(中国 明時代 15世紀)も必見です。

白地を活かし、コバルトの青と陰刻により、逆巻く波濤の中を天に向かって白龍が飛んでいく様子を見事に表現しています。

天球瓶とは、本作のように、ふくらみのある胴に、すらりと首が伸びた瓶のことを指します。

まるで天体(天球)の様子を表したように見えることから、名付けられました。

 

2章では、様々な形・装飾・技法などに注目しながら、中国鑑賞陶器を中心に世界に愛され、多くの人々の暮らしに彩りを添えてきた器の魅力を紹介しています。

 

《饕餮文雷文瓿》(中国 商(殷)時代 前14-13世紀 荏原 畠山美術館)は、文様は控えめで、やや平坦ですが、雷文、渦巻文、饕餮文などが表されています。

等間隔におかれた擂座が抑えた造形の中にリズムを生み出しています。

 

また、《唐三彩万年壺》(中国 唐時代 8世紀 荏原 畠山美術館)のような副葬品と考えられる壺も紹介されています。

菱形文が一定の間隔で並び、素朴な織物のようなあたたかみが感じられます。

 

そして3章では、同館に収集された作品と、畠山一清と後継者、酒井億尋の社会活動とその芸術レガシーを、彫刻、絵画、建築といったジャンルで辿る作品が紹介されています。

 

コレクターに愛蔵され、あるいは遺族の手で大切に守られながら、縁に引き寄せられて同館に集まった作品たち。

館に関わる芸術を、その愛着や関心をたどりながら鑑賞してみませんか。

 

 

 

 

会期:2025年7月26日(土)〜9月15日(月)

会場:荏原 畠山美術館

   〒108-0071 東京都港区白金台2-20-12

開館時間:午前10時〜午後5時(入館は4時半まで)

休館日:月曜日

 

高崎市タワー美術館で開催中の「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」展でこれはという作品、《大坂天王寺》(1927年 渡邊木版美術画舗)の主観レビューをお届けします。


作品の前に立ってみると分かりますが、近景を鮮やかに彩色し、遠景をモノクロの濃淡で描くことで、遠近感を出すとともに、雪夜の表現に工夫がなされています。

それによって、実際に絵画世界へ入っているような、いわゆる没入感が感じられます。

 

また、水平線を多用しているため、一見、静かな、動きのない作品に見えませんか。

水辺線の数を数えてみてください。

雪がしんしんと降る、夜の静寂を強調しているようです。

 

しかし、人物とその足跡が動きをもたらします。

そのため、自然と目が行き、足跡を辿るような視線の動きになります。

私は、巴水はわざとこのような構図にしたと考えます。

静と動、この対比によって、作品に緊張感が生まれるのです。

 

最後に、巴水の作品ではよくあることですが、建物の赤と、雪の白とのコントラストが美しく、本作を引き締めています。

 

このように、2点の対比を持ち込み、緊張感のある美しさを表現したのが、《大坂天王寺》なのではないでしょうか。