埼玉県立近代美術館で開催中の「MOMASコレクション」展でこれは、と思う作品、《森》の主観レビューをお届けします。
暗い森の中で裸婦の肌だけが妖しく光を帯びています。
周囲が暗いからこそ女性の存在は際立ち、彼女は現実の人物というよりも、森の奥に現れた幻影や理想の存在のように見えます。
一方、画面左奥には列車が静かに通り過ぎています。
列車は都市や日常生活を思わせるモチーフであり、そのすぐ隣にこの幻想的な森が存在しています。
現実と非現実は遠く隔たっているのではなく、実は隣り合っているのではないかという印象を受けます。
森は「あちら側」の世界なのではないでしょうか。
人は森に対して、未知や神秘、無意識への期待を抱いています。
その無意識の世界だからこそ、現実では形にならない欲望や理想が、裸婦という姿をとって現れます。
まとめると以下のようになります。
暗い森の中で裸婦だけが妖しく輝く姿は、現実の人物ではなく、無意識や憧れが具現化した存在のように見えた。左奥を走る列車は日常生活を思わせるが、そのすぐ隣に幻想的な森が広がっていることから、現実と「あちら側」の世界は意外なほど近くに隣り合っているのではないかと感じた。森は人が抱く無意識や期待を受け止め、それを形あるものとして現す場所なのかもしれない。
ポール・デルヴォー(1948)《森》埼玉県立近代美術館

