東京国立博物館で開催中の「空海と真言の名宝」展でこれは、と思う作品、《如意輪観音菩薩坐像》(平安時代 11世紀)大阪・大門寺 の主観レビューをお届けします。
この像は、自然と仏教思想が融合した平安彫刻の傑作と評価されています。
木を人工的に整え尽くすのではなく、自然木の形・節・空洞までも仏の世界に取り込んでいる点は、日本の山岳信仰や自然崇拝とも響き合う造形です。
片足を立て、右手を頬に当てて頭を傾ける姿勢は、如意輪観音に特有の「思惟相」であり、深く衆生救済を思案する姿を表しています。
その穏やかな表情は、物思いにふけるような静かな情趣を感じさせます。
また、板光背には墨描きによる繊細な文様が施されており、彩色や透かし彫りの光背とは異なる素朴で落ち着いた趣があります。
このような簡潔な光背表現は、思惟する姿の静けさと調和しており、作品全体の精神性を高めているように思われます。
衣文は自然な起伏をもち、身体は細身で、顔立ちは浅い彫りと丸みを帯びた造形となっています。
こうした特徴は、写実性と柔和な美を志向した平安時代後期の作風をよく示しています。
