上野の森美術館で開催中の、「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」でこれは、と思う作品、フィンセント・ファン・ゴッホ(1881)《じゃがいもの皮をむく女》クレラー=ミュラー美術館蔵 の主観レビューをお届けします。
女性が窓辺で静かにじゃがいもの皮をむいています。
特別な出来事ではなく、ありふれた家事の一場面ですが、ゴッホはその労働を誠実で尊いものとして見つめています。
女性の服装は薄汚れ、質素であり、窓外の木々も葉を落としています。
暖かさや豊かさを感じさせる要素はほとんどなく、農民の生活の厳しさが暗示されています。
また、全体は褐色や灰色を基調とする沈んだ色彩で統一され、貧しく慎ましい生活を印象づけます。
一方、室内を構成する窓枠や椅子、壁面などには垂直線・水平線が明確に見られ、画面全体では安定した構図をとっています。
女性も前かがみではありますが、崩れた姿勢ではなく静かに仕事に向き合っています。
そのため、この女性は単に「貧しい人」として描かれているのではなく、厳しい生活の中でも自立し、日々の労働を誠実に営む存在として表されているように感じられます。
このような画面の安定性は、一時的な貧困ではなく、土に根ざして生きる農民の普遍性や永続性を示そうとした表情でないでしょうか。
