東京国立近代美術館で開催中の「所蔵作品展 MOMATコレクション」でこれは、と思う作品、《石見有福温泉》の主観レビューをお届けします。
本作は、一見すると雪景色のようにも見えますが、夜の温泉街に降る雪を主題にした情緒豊かな風景版画です。
人々や建物は黒を基調として描かれ、白い雪との対比によって、雪景色の静けさや夜の暗さがいっそう際立っています。
建物の屋根や坂道、階段には斜線が多く用いられ、画面にリズムや奥行きを与えるとともに、人々の行き交う動きや、雪が降り続く情景を感じさせます。
温泉街は周囲を山々に囲まれて描かれており、人々が豊かな自然と共に暮らしている山間の集落であることを表しています。
提灯や明かりに使われた赤色は、画面のアクセントとなるだけでなく、雪の夜の寒さの中に温泉街の温もりや人々の営みを感じさせています。
織田一磨(1925)《石見有福温泉》東京国立近代美術館
