パナソニック汐留美術館で開催中の「ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶」でこれは、と思う作品、ジョルジュ・ルオー(1909)《法廷》パナソニック汐留美術館 の主観レビューをお届けします。
本作は、ルオーの初期を代表する社会批評作品のひとつで、単なる法廷の情景を超えて、人間社会の偽善や不正義を象徴的に描いた絵です。
画面中央に3人の裁判官が机を前に座り、右上の隅には被告がいます。
左端に書記が立ち、その斜め手前に傍聴人の顔が見えます。
彼らと向かい合い、書類を掲げているのは弁護士です。
傍聴人の視線は弁護士に向かい、弁護士は書記を見ています。
そして、書記と裁判官は被告を見ており、最終的に被告「向かいます。
しかし、中央にいるのは裁判官で、色彩も赤の法服を着ているので一番目立ちます。
主役はどちらなのだというアンマッチが面白い作品です。
つまり、視線の論理では被告が中心ですが、視覚の力では裁判官が中心になります。
正義の場であるはずの法廷が、いつの間にか「裁く人間の権力を誇示する場」になっているのです。
被告は小さく隅に追いやられ、ほとんど匿名的な存在なのに対して、裁判官は巨大で、しかもどこかグロテスクに強調されています。
ここには、「罪とは誰のものか」という問いすら潜んでいます。
