神奈川県立近代美術館鎌倉別館で開催中の「福田尚代 あわいのほとり」展でこれは、と思う作品、福田尚代(2013-2023)《書物の魂♯02》東京都現代美術館蔵 の主観レビューをお届けします。
ケースの中に、淡いピンク色の綿のような塊が置かれています。
これは、本に付いている栞ひもをほぐして、繊維状にしたものを集めてできた塊です。
つまり、「書物の内側のものが外の世界に現れた」状態です。
繊維は軽く、儚く見えます。
この軽さは、物質としては存在しているが、すぐ消えてしまいそう、という境界的な状態を作ります。
それはまるで、魂・霊・気配のような存在にも見えます。
繊維の塊は未完成の形をしています。
彫刻のように決まった形ではなく、何かに変わる途中だが、まだ名前を持たない存在のようにも見えます。
まるで、意思を持って何かになりたいようです。
そして、それは私達人間には窺い知ることはできません。
超越した神だけが知っているのだ。
書物は本来、人間の知識・言葉・理解の象徴です。
しかし、その「書物」から出てきたものが、人間の理解を超えているというのはとても象徴的です。
つまり、知の象徴である本から、理解できないものが生まれるという逆説になります。
超越した神だけが知っているという読みは、哲学的には神学的解釈、超越的存在の視点、という方向になります。
本作が、白い台座、ケース、中央に浮かぶ繊維という展示になっているのは、どこか標本・祭壇・聖遺物のような印象もあります。
つまり、まとめると次のようになります。
書物の内部にあったものが解き放たれ、吹けば消えそうなほど儚い存在として現れている。
それは何かになろうとしている意志を感じさせるが、その理由は人間の理解を超えており、ただ神だけが知っている。
