埼玉県立近代美術館で開催中の「コレクションの舞台裏ー光をあてる、掘り起こす。収蔵品をめぐる7つの試み」展でこれは、と思う作品、《円と空間》の主観レビューをお届けします。
画面中央に並ぶ複数の円形は、同じ形でありながら内部の表情がそれぞれ異なります。
また、ぼかしやグラデーションなどによって、平面なのに立体的、奥行きのある印象が生まれています。
下段の茶色の部分は、水平に積層したような表現で、上部の円とは質感も性格も異なります。
それは、円を支える現実の基盤としての大地のように思えます。
そして、大地や円は一見どこまでも続くかのようですが、有限で、差異もあります。
円は「完全」「永遠」「普遍」の象徴です。
つまり、普遍的に見えるものほど、実は個別的で限定的であるという矛盾が示されています。
大切なのは、単一の世界だと思い込まず、差異を見つけることです。
これは、思考停止への警鐘、均質化された世界観への違和感、として読むことができます。
そして、それはいずれ終わることを忘れない。
画面が黒で囲まれている点がこの解釈を支持します。
つまり、無限を想起させながらも、必ず「終わり」がある、永遠と思っているものも、知覚の中では有限、という二重性が成立しています。
まとめると、思考を入口で止めないことの大切さを感じます。
見ること自体が思考を深める行為であると言えるでしょう。
田中田鶴子(1988)《円と空間》埼玉県立近代美術館

