パナソニック汐留美術館で開催中の「美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像」展で、これは、と思う作品、松本竣介(1941)《ニコライ堂の横の道》公益財団法人大川美術館蔵 の主観レビューをお届けします。
本作は、ニコライ堂の横の道を一人のシルエットの人物が歩いている風景を描いています。
また、樹木やニコライ堂の塔と十字架の垂直線がリズミカルに描かれています。
人物は小さく、黒いシルエットで、前傾気味に歩いており、不安や疲労、精神的重さを感じます。
季節は冬の夕刻と思われますが、完全な闇ではなく、まだ光が残ってるいます。
これは、希望が消えたのではなく、見えにくくなった状態を示しています。
また、ニコライ堂(ロシア正教会の聖堂ですが)から、キリスト教文化圏の米国と開戦し、敵対関係に入った事を意味しているのではないでしょうか。
しかし、敵国の象徴を告発するでも、敵国文化を賛美するわけでもなく、むしろ、切断されつつある精神的拠り所として描いていると思われます。
したがって、本作は、開戦を批判する政治画ではなく、開戦によって生じた精神的断絶と不安を都市風景に仮託して描いたと言えるのではないでしょうか。
